2017 Fiscal Year Research-status Report
生物個体の特定環境部位での代謝反応解析を目指した分子プローブの開発
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17K19193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80579269)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 人工代謝物 / 分子プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
生体では代謝と呼ばれる酵素・化学反応によって、エネルギー産生・シグナル伝達などの恒常性を維持している。代謝反応は、私たちの生体機能と密接に関わっているため、代謝異常により疾患になることもあれば、疾患の結果として代謝に変動が生じる事もある。こういった代謝反応を血や尿を利用して解析する液体生検検査からは、生体機能の異常からくる代謝物の変動を知る上で重要な情報を得ることができる。しかし、この代謝物の変動は異常部位からでなく正常な部位からの通常の代謝物も含んでいるため、全体としての代謝物変動は小さいものが多い。また、変動がどういった部位・環境の異常に由来するものか、解析することは困難という問題があった。そこで、本研究では、化学的な工夫を埋め込んだ人工的な代謝物を利用して、特定の部位(環境)での代謝反応を高感度・高精度に得る手法の開発を目指している。具体的には、どのような場所で起こった反応なのかを明らかにできる工夫として、分子ロジックゲートを用いる。ロジックゲートの選択条件には、特定の環境と、特定代謝酵素などの2条件以上を用い、複数条件が満たされるときのみ代謝されるAND型ロジックゲート人工代謝物の開発を目指している 目標の達成に向けて、本年度は、1つのコンセプトモデルとして、いくつかの疾患に関与することが知られている酵素、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)を標的とした。GGTの立体構造、及び、実験データより、GGTの基質認識に重要な基質部位を明らかにし、その部位を酸化刺激応答性の官能基によりマスクした分子を設計し、合成を行った。この人工代謝物は、GGTの反応前後で蛍光強度が変化するように設計した。合成した蛍光色素を含む人工代謝物は、酸化的環境とGGT共存という2条件がそろった際に、大幅な蛍光強度変化が観測され、ANDロジックゲート型人工代謝物として機能することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GGTと基質との反応中間体の結晶構造データや、予備的な実験結果より、GGTからの基質認識に重要な基質側の部位を明らかにした。この知見を踏まえ、GGT用の人工代謝物を候補として設計し、合成した。反応の進行をモニタリングしやすいように、この人工代謝物は、GGTの反応前後で蛍光強度が変化するように設計した。In vitroの段階の評価ではあるが、設計した人工代謝物は、酸化的環境とGGT共存という2条件がそろった際に、大幅な蛍光強度変化が観測され、ANDロジックゲート型人工代謝物として機能することを確認できた。最初の設計としては、十分な知見を得ることができると想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在合成したANDロジックゲート型人工代謝物が機能するか検討を引き続き行うとともに、生体条件の中で有効に機能するロジックゲートを種々検討する。 検討の結果を分子設計にフィードバックし、様々なタンパク質や分子種が多数存在する環境下で有効に機能するANDロジックゲート型人工代謝物の開発を目指す。 有効に機能するANDロジックゲート型人工代謝物を用いて、細胞、動物を用い、特定環境下での代謝反応の解析を目指す。
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