2017 Fiscal Year Research-status Report
Visualization and detection of the key ribonucleoprotein aggregates of DM1
Project/Area Number |
17K19199
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森井 孝 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90222348)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | トリプレットリピート病 / RNA凝集体 / 高速AFM / 核酸関連化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプレットリピート病と総称される疾患では、疾患遺伝子中のリピートの長さが親から子孫への遺伝に伴って増加する。トリプレットリピートの反復回数が増える要因は謎に包まれている。 筋強直性ジストロフィー1型の患者では、筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の3’側非翻訳領域に存在するCTGリピート配列の繰り返し数が百から数千と異常に増加する。この遺伝子から合成されるmRNAの異常伸長したCUGリピート配列に、スプライシング因子であるタンパク質MBNL1が結合して、核内で凝集体を形成し、細胞のスプライシング機能に異常が生じて発病する機構が提唱され、これまでの変異タンパク質が原因となる疾患とは異なる「RNA病」として注目されている。 この疾患を理解するうえでの重要な鍵は、『なぜ、正常な繰り返し数のCUGリピート配列mRNAにMBNL1が結合しても凝集体は形成されないが、繰り返し数が増加したCUGリピート配列mRNAでは凝集体が形成されるのか?』であるが、MBNL1とmRNAが形成する凝集体の構造および物性は未だに不明である。さらに、RNA-タンパク質の凝集現象は、アルツハイマー病に関連するアミロイドなどのタンパク質凝集体に比べて化学的知見が乏しく、未開拓な学術領域である. 本研究では、細胞外で構築したCUGリピートRNAの集積場を用いて、CUGリピート配列の繰り返し数に応じて、どのようなMBNL1タンパク質とのRNP複合体が形成されるかを解析する。これにより、(1)CUGリピート配列RNAとMBNL1タンパク質による凝集体形成の分子機構と凝集体の化学特性を明らかにし、さらに(2)CUGリピートRNAの集積場を用いてCUGリピートRNAとMBNL1が形成する凝集体に結合するペプチドを探索する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①数千のCTGリピート配列が形成する構造を再現するために、30回のCUG繰り返し配列を有するRNAを、数ナノメートルの間隔で配置する。RNA分子の数、距離を制御して一分子ずつ配置する。この配置を実現するために、DNAナノ構造体によって「足場」を設計した。一辺60 nmの空孔を持つDNAナノ構造体(杉山ら、J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 1592など)をDNAオリガミ法によって構築し、アガロースゲル電気泳動と高速AFMによって構造を確認した。 ②さまざまな繰り返し数に相当するCUGリピートRNAを集積させ、それらへのMBNL1タンパク質の結合を高速AFMを用いてRNP凝集体構造および動的な凝集体形成過程を観察するために、作製した「足場」にDNAカテナンを導入し、アガロースゲル電気泳動と高速AFMによって、カテナン構造を確認した。 これら①、②の結果から、一辺60 nmの空孔を持つDNAナノ構造体は、DNAトポロジー構造の形成とその可視化を可能にする事が明らかになった。また、空孔内に橋渡しした一本鎖DNAとともに、空孔周辺部に一本鎖DNAを導入することにより、30回のCUG繰り返し配列を有するRNAを多数配置出来る可能性が実証できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
①DMPK遺伝子で正常なCTGの繰り返しとみなされる30回CUG配列が繰り返したRNA[(CUG)30RNA]を基本単位として合成する。30回から1000回以上のCUGリピートを細胞外で再現するため、DNAナノ構造体上にCUG30RNA を1~50分子配置する。CUG30RNAの数・空間配置を制御したCUGリピートRNA集積場において、それぞれのRNA集積状態(=リピート数)でMBNL1タンパク質が形成する複合体(凝集体)の大きさ・形状を、高速AFMを用いた観察によって明らかにする。また、複合体および凝集体の動的な形態変化を経時的に観察することにより、凝集体形成の速度論的な知見を得る。 さらに、CUGリピートRNA結合分子(中谷ら、Nature Chem. Biol. 2005, 1, 39; ZimmermanらJ. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14180)と凝集体との結合を観測する。 ②MBNL1と凝集体を形成するCUGリピートRNA集積場から形成されるRNP凝集体に特異的に結合するペプチドをファージディスプレイ法(Science 1985, 228, 1315)によって探索する。得られたペプチドを蛍光色素で修飾し、細胞内でCUGリピートRNAとMBNL1が形成する凝集体を可視化する検出ツールとしての機能を検証する。
|
Causes of Carryover |
H29年度実施予定の実験を、H30年度に実施するため。
|