2017 Fiscal Year Research-status Report
ケージドアミノアシルtRNAによる初期胚における翻訳の時空間的制御
Project/Area Number |
17K19202
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大槻 高史 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80321735)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 拓哉 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60557768)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | ケージドアミノアシルtRNA / 翻訳 / 光制御 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者らは最近、ケージドアミノアシルtRNAという光応答性の化合物を作り、これを用いて翻訳を光で制御する方法を開発した。ただし、これまでは、本手法による翻訳の光制御が可能であることをin vitro及び培養細胞内で示しただけで、実際に生命科学の課題解決に応用はしていない。そこで、本研究では、ケージドaa-tRNAによる翻訳の光制御法を、哺乳動物の初期発生の研究に応用しようと考えた。動物の発生過程には、必要なタイミングで局所的に合成されるタンパク質が多数関わっていると考えられる。その役割を解明するためには、そのタンパク質の発現を時空間的に制御する方法が有効である。 平成29年度は、胚細胞内でケージドアミノアシルtRNAによる翻訳の光制御を行うための準備段階を進めた。まずは、翻訳を可視化するための蛍光タンパク質(mOrange2)の発現ベクターおよびmRNAを準備した。mRNAはキャップ構造とポリAを含むものを調製した。マウス胚では1細胞の後期から2細胞期にかけて新しい胚性の転写が始まるため、1細胞期においては発現ベクターの導入で転写・翻訳を起こすことは難しかったが、mRNAの導入により1細胞期においてmOrange2の発現(翻訳のみ)を確認することができた。このときリポフェクション法では、細胞のダメージが大きくmOrange2の発現量は少なかったが、マイクロインジェクション法でははっきりと発現が確認できた。さらには、ケージドアミノアシルtRNA(アンチコドンはamber)の合成を行ってin vitroで光応答することを確認した。また、ケージドアミノアシルtRNAに対応するamber変異入りのmOrange2 mRNAの調製も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroでは光制御可能なケージドアミノアシルtRNAの合成を終え、胚の細胞内でタンパク質合成を可視化するためのmOrange2 mRNAの調製も行って、その胚細胞内発現が見られるような導入法の検討も終えた。以上により、平成29年度においては、次年度に胚細胞内での翻訳の光制御を行うための準備を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに準備・合成した材料により、胚細胞内での翻訳の光制御を行う。ケージドアミノアシルtRNAやmRNAのインジェクション時の最適濃度、および光照射の条件を検討する。蛍光タンパク質のmRNAを用いて、翻訳の光制御が確認できたのち、胚の発生に影響しうるタンパク質の合成の光制御に取り組む。胚の初期発生能を高めうる遺伝子としてPGC-1αを選び、このmRNA(および、その鋳型となるDNA)については、現在、調製を進めている。これを用いて、その翻訳の光制御および発生への影響を調べる。
|
Causes of Carryover |
初期胚の細胞内で特定タンパク質の合成を引き起こすために、当初は転写・翻訳の鋳型となる遺伝子を細胞内導入していた。しかし、早い段階の胚では遺伝子ではなくmRNAを導入した方がタンパク質合成を引き起こすためには適していることが分かった。このmRNAの合成には、転写用の酵素だけでなく、CAPおよびpolyAを付加するためのキットの費用も必要である。今年度はmRNAよりも遺伝子を中心として用いたため材料費を抑えることができ、約18万円の次年度使用額が生じた。次年度においてはmRNAを中心として用いるため多めの材料費が必要になる。この次年度使用額をmRNA作製費用に充てる。
|