2017 Fiscal Year Research-status Report
Basic study for chemical biology of heme
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17K19207
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
平山 祐 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (10600207)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ヘム鉄 / 蛍光プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、あらゆる生命体に必須であり、非常にユニークな構造、化学反応性を示す生体内化学種であるヘムの生体内挙動の解明を目指し、生体内のヘムおよび関連分子を非侵襲的かつ選択的に「見る」ための多様な蛍光プローブ分子を開発し、これまで詳細な解析が困難であったヘムの細胞内輸送、取り込み、動植物個体内における挙動あるいは機能について、その全容を解明することを目的とする。 当該年度においてはヘム鉄選択的蛍光プローブにおける構造活性相関研究を集中的に実施した。その結果、10種類の類縁体を合成することにより、ヘム鉄に対する選択的蛍光応答を得るために必須の構造要件を見出すことができた。さらに、研究開始時に開発していたプロトタイプの蛍光プローブに比較し、ヘム鉄選択性と蛍光応答コントラストを向上させることができた。一方、ヘム鉄蛍光プローブの細胞イメージングへの応用については、アセトキシメチル(AM)エステルの導入等、種々の構造活性相関研究を実施した。その結果、AMエステルの数を4つまで増加させても細胞内への移行が観察できず、当該プローブ構造が非常に細胞内への移行性が低いものであることがわかった。さらに脂溶性の向上について検討したところ、脂肪酸を結合させることにより細胞内移行は達成できた。しかしながら当該化合物については細胞内での凝集が見られ、ヘム鉄の細胞内検出には至っていない。 一方、ヘム鉄により活性化されるタンパク質修飾分子の開発研究においては、いくつかの候補化合物を合成し、ヘム鉄存在下におけるタンパク質修飾反応を検討した。その結果、低収率ではあるものの、ヘム鉄選択的なタンパク質修飾反応を見出すことに成功し、さらに初期的な検討では細胞内でも生体分子への結合反応が起こっていることを示唆するデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においてはまず、①ヘム鉄の蛍光プローブとして機能するための構造要件の探索と、②細胞へと応用可能な蛍光プローブ開発を目標としていたが、①については、大きく進展し、ヘム鉄検出部位となる部分の構造要件をある程度確立することができた。また、②についてはプローブ自身の脂溶性が低すぎるため、細胞膜透過性が低いことが分かってきた。脂溶性を高めた結果、細胞内への移行が確認できたため、こちらも今後の分子設計指針を立てることができた。 さらに、③ヘムにより活性化されるタンパク質修飾分子の開発については、実際にヘム鉄存在下のみでタンパク質修飾反応を起こすような化合物を開発することに成功しており、当該年度にて計画していた、ヘム鉄研究を推進するのに必要な化合物に関する基礎的知見が確立できた。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、①ヘム鉄蛍光プローブの開発と②ヘム活性化型タンパク質修飾分子の開発を引き続き実施し、これらを使った応用研究へと展開する予定である。 ①については、これまでに得られたヘム鉄選択性に関する知見をもとに、細胞内への導入効率の向上と生細胞内での機能を達成するよう化合物の構造を最適化していく予定である。また、応答性が良好なものについては、随時細胞イメージングとヘム鉄制御生理活性化合物の探索研究へと応用していく予定である。 ②については、反応についての基礎的知見(反応効率、反応速度、反応機構)の取得とともに、細胞内ヘム鉄関連タンパク質の検出、さらにはヘム鉄選択的プロテオミクス研究へと展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度においては化合物の構造活性相関研究と細胞実験への応用を中心に計画していたが、構造活性相関研究がほぼ中心となり、予定していた細胞実験用試薬の購入が少なく、有機合成に関する試薬と器具の購入が主であった。また、合成試薬に関しては他の研究助成にて実施していた研究と、合成中間体や使用する試薬の共用が可能であったこと、化合物の分子設計を当初よりも簡略化可能であったこと等から、有機合成に要する消耗品費を節約することができた。以上のことから、次年度の使用額が生じることとなった。
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Research Products
(3 results)