2017 Fiscal Year Research-status Report
米特徴成分γ-オリザノールの吸収代謝解明から導く新ビタミン様成分の可能性創成
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17K19217
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 陽夫 東北大学, 農学研究科, 教授 (20157639)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | γ-オリザノール / 吸収代謝 / ビタミン様活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品機能性の研究が国内外で広域に展開されている。食品成分の消化管からの吸収と体内での代謝の理解は極めて重要であり、申請者は様々な食品成分の分析法を開発し、吸収代謝を解明して、生理作用発現との関係評価を進めてきた。その中で、申請者らはごく最近、米の糠に特徴的に含まれるγ-オリザノールをマウスに与えると、従来の学説とは異なり、γ-オリザノールはそのままの形で吸収され、体内に十分量存在することを見出した。さらに、通常の市販固形食で飼育しているだけのマウス血中にもγ-オリザノールが存在することを確認した。したがって、常時γ-オリザノールが体内に存在していると言え、γ-オリザノールには「ビタミン様物質」という概念は全くなかったものの、その確固たる活性・薬理作用を踏まえると、γ-オリザノールのビタミン様活性が新たに想定され得る。そこで本研究課題「米特徴成分γ-オリザノールの吸収代謝解明から導く新ビタミン様成分の可能性創成」では、γ-オリザノールの吸収代謝の解明とともに、γ-オリザノールのビタミン様活性の解明を目指した。そのために本年度は、血液に加えて臓器におけるγ-オリザノールの解析を実施するための一連の分析法(抽出法、精製法、LC-MS/MS条件)を構築し、さらに本法を用いてγ-オリザノールを含む食餌を与えたマウスの様々な血液と臓器を解析し、これらにγ-オリザノールが確かにそのままの形で存在することを証明した。そこでさらなる吸収代謝の解明に向けて、次年度に実施予定であったリンパカニュレーション試験や細胞実験にも一部着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでに構築してきたLC-MS/MSによるγ-オリザノールの分析法をさらに深化させ、血液に加えて臓器の解析を可能とするための抽出法や精製法、分析条件を整備した。具体的には、クロロホルム/メタノール混液を用いた液-液抽出により、血漿や種々の臓器からγ-オリザノールを高回収率で抽出できることを確認し、固相抽出を用いて精製する手法を検討した。本抽出・精製法により調製されたサンプルは、LC-MS/MS分析に供した際に、イオンサプレッション等が生じないことも確認し、高精度に生体サンプル中のγ-オリザノールを解析できる一連の解析手法を構築した。本法を用いてγ-オリザノールを含む食餌を長期間与えたマウスの血液と様々な臓器を解析し、これらにγ-オリザノールが確かにそのままの形で存在することを証明した。そこでさらなる吸収代謝の解明に向けて、次年度に実施予定であったリンパカニュレーション試験や細胞実験にも一部着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットを用いたリンパカニュレーション試験を継続して実施し、いまだ明らかとなっていないγ-オリザノールの吸収率や代謝を評価する。次いで、健常者にγ-オリザノールを含むサプリメントや食事を与え、ヒト吸収代謝試験を行う。これらの試験結果から、γ-オリザノールがそのままの形で吸収され、常時、体内に存在することを確証・明示するとともに、吸収代謝のメカニズムを細胞実験を交えて解明する。加えて、γ-オリザノールのビタミン様活性の解明に向けて、動物実験でγ-オリザノールの欠乏症に関する評価を行う。具体的には、市販食にはγ-オリザノールが含まれるため、γ-オリザノールを含まない特別な餌を調製し、マウスに与える。例えば、毛並みが悪い、繁殖能力が悪いなどの欠乏症状が無いかを、生化学的に詳細に調べ、γ-オリザノールの必須栄養素の可能性、ひいては哺乳類のビタミンあるいはビタミン様成分であることの可能性を探る。さらに、欠乏症が認められた場合、既知のγ-オリザノールの種々の機能性(自律神経を整える効果や血中脂質改善作用)を踏まえつつ、欠乏症のメカニズムを動物試験や細胞実験などで分子生物学的手法を用いて解明を図る。以上の結果を総合的に判断し、γ-オリザノールのビタミン様成分の可能性について結論付ける。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表予定を変更したため、学会発表に関わる経費の変動分を翌年度分として請求した。
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