2017 Fiscal Year Research-status Report
数理モデリングとの連携による開放系土壌に導入した微生物の生残性向上法の探索
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17K19220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 重人 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10313074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 尚 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (90431791)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌 / 細菌群集構造 / 生残性 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌をそのまま培養、炭素源を添加して培養、および、培養温度を変えて培養し、細菌組成の変遷を追跡した。 まず、群集構造間の類似度をランクサイズ関係に基づいた二つの異なる指標で評価することを試みた。これにより、微生物群集系が土壌養分条件などの差に対して示す頑健性と可塑性の両性質を定量的に評価することが可能であることが明らかになってきており、現在、解析を進めている。これは土壌細菌群集構造を数理生態学的手法により記述するものであり、新しい試みである。 また、バークホルデリア属細菌の生残性を、バークホルデリア属細菌以外の細菌を共接種することにより高めるために、群集構造の変動における細菌分類群間の相関を調べた。その結果、一部の土壌ではミクロコッカス科やアシドバクテリア門、ヴェルコミクロビア門の細菌の変動が、バークホルデリア属細菌の変動と高い相関を示した。これらは潜在的に共接種する細菌の候補となり得ると考えられた。しかし、後者2つは培養困難なグループであり、土壌に接種するための活性の高い菌体を用意するのが困難であるため、共接種細菌としては不適切であると考えられた。また、これらの相互関係に関する結果は土壌によっても異なり、そもそも細菌全体に対するそれぞれの分類群の存在比率が低いことが明らかとなった。これにより、バークホルデリア属細菌の生残性を高めることだけを目標として本研究を遂行することは困難であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
群集構造の生データ(大量の塩基配列)を得るための次世代シーケンサーの不調、および原因不明のデータ不良により、一部のデータは解析に使用することができなくなり、また実験を3ヶ月ほど停止した。シーケンサーの修理を受け、また、データ不良に対する回避策を考案し、現在では解析が可能な状態に戻っている。そのため、今後の解析には支障はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌細菌群集構造とその継時的変遷のデータについて、共同研究者の力も得て、さらに数理的解析や統計処理を進め、群集構造に潜む数理的特定を明らかにしてゆく。 また、研究実績の概要で述べた通り、Burkholderia属細菌の生残性を高めることだけを目標として本研究を遂行することは困難であると考えられた。そのため、Burkholderia属細菌にこだわらず、さまざまな土壌細菌分類群の間の相互作用を解析し、共接種による接種細菌の生残性向上に最適な分類群の組み合わせを選択する。その際、培養可能な分類群を選ぶ。選択した細菌分類群の組み合わせを用いて共接種実験を行い、共接種による生残性向上の効果を検証する。 さらに、共接種以外の方法による接種細菌の生残性向上の可能性を探るため、環境要因(水分含量や栄養条件など)を変えて土壌を培養し、細菌群集構造がどのように変化するか解析する。このデータにより、どのように環境要因に手を加えれば、どのような分類群の細菌の存在量を高めることができるか明らかになると期待される。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況で述べた通り、次世代シーケンサーの不調、および原因不明のデータ不良により、一部のデータは解析に使用することができなくなり、また実験を3ヶ月ほど停止した。そのため、H29年度に行う予定だった解析がH30年度にずれ込んでいる。現在、シーケンサーの不調は 解決し、また原因不明のデータ不良には回避策を考案することにより、解析に支障はなくなっている。そのため、今後の研究は順調に進み、研究費の執行も問題ないと考えている。
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