2018 Fiscal Year Research-status Report
アスパラガスにおける性決定遺伝子の探索と性進化の解明
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17K19238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 浩司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50467693)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | アスパラガス |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の中には個体が雌雄に分かれることにより、種の遺伝的多様性を維持している。この様な性質をもつ植物は雌雄異株と呼ばれており、その性は性染色体によって支配されている。アスパラガスはXY型の性染色体をもち、XYのとき雄株、XXのとき雌株となる。アスパラガスの性はY染色体の有無により決定されるため、Y染色体上には雄ずいの発達を促進および雌ずいの発達を抑制する性決定遺伝子が存在すると予想されていた。私達はこれまでに雄ずいの発達を促進する性決定遺伝子の候補としてMSE1を発見している。また、最近アメリカのグループによりアスパラガスの全ゲノムシーケンスが公開され、雌ずい側の性決定遺伝子の候補としてSOFF遺伝子が提案されている。 本研究では公開されたY染色体の配列に雌雄のゲノムをマッピングして、Y染色体に特異的な領域を特定することにより、染色体上の性決定領域の特定を試みた。性決定領域は約700 kbと報告されていたが、本解析により、約2 Mbの領域に雄株特異的にDNAリードがマッピングされている領域が観察され、より広い領域が組み換えの抑制を受けていると推察された。次にこの領域から雄株特異的に発現する遺伝子を特定するために、雌雄の形態差が顕れる未熟なつぼみ由来のRNAリードをマッピングした。今回解析した2 Mbの領域にはMSE1とアメリカのグループにより報告されているNudix hydrolaseが雄株特異的な発現を示しており、他に未報告の遺伝子が5つ雄株特異的な発現を示していた。興味深いことに、雌ずい側の候補遺伝子として報告されているSOFF遺伝子はマップされたリードがほとんど観察されなかった。また、SOFFには約90%の相同性をもつ遺伝子(SOFFL)が染色体5番に存在する。そこで、このSOFFLが発現しているかを同様に調べたところ、雌雄両方で発現していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はアスパラガスの全ゲノムが公開されたことにより、Y染色体の非組み換え領域の特定とそこで発現している遺伝子を調べることが可能になった。そのため、RNAリードを用いたマッピングにより、雄株特異的な発現を示す遺伝子を新たに5つ見つけることができた。申請時には想定していなかったことであるが、Y染色体の解析は大きく進展した。しかし、このゲノム配列はNが含む部分も多く、まだ調査できていない領域もあると思われる。SOFF遺伝子の発現が観察されないことは意外であったが、発現時期が異なる可能性もあるため、さらなる調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は定量PCR法等を用いてSOFFおよび新たに発見した5つの遺伝子についてRNAの発現パターンを調べる予定である。また、全ゲノムの公開によってY染色体由来のsmall RNA発現の解析やそのターゲット予測が可能になったため、雌雄のつぼみを用いてsmall RNAシーケンスを行い、雌雄の分化に関わるsmall RNAがないかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は本年度使用予定分はすべて使用し、前年度からの繰り越し分について研究を進めて、繰り越し分の約半額を使用した。来年度分の研究は計画通りに進め、初年度分の遅れについて繰り越した予算を用いて研究を行う予定である。
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Research Products
(1 results)