2017 Fiscal Year Research-status Report
青枯病菌のユニークな土壌潜伏機構の解明と予防薬開発
Project/Area Number |
17K19244
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
甲斐 建次 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (40508404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 修治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80405357)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | クオラムセンシング / リポペプチド / 青枯病菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
青枯病菌は、世界規模で猛威を振るう植物病原細菌である。本病はナス科を中心に、200種以上の植物に急激な萎凋・枯死を引き起こす恐ろしいものであるが、有効な化学防除法は確立されていない難防除植物病害である。現在のところ、罹った場合はなす術がないのが実情である。さらに厄介なことに、一度、青枯病菌が発生した土壌中には、菌が多く生息し続けるため、再び青枯病菌が発生するという高いリスクが伴う。しかしこれまでに、青枯病菌を含め多くの細菌が土壌に潜伏し続ける分子メカニズムはほとんど分かっていない。本申請研究では、青枯病菌の土壌潜伏機構を分子レベルで解明し、ナス科植物を本病から守るための化学的基盤を作り上げる。平成29年度では、クオラムセンシング制御下にあるralstonin類の単離・構造決定および生合成欠損株の作製を研究項目として進めた。Ralstonin類の単離・構造決定は平成29年度の早い時期に達成することができ、Organic Letters誌に発表した。Ralstonin類の構造は極めてユニークなリポペプチドであり、生合成研究あるいは全合成研究の対象としても大きな注目を集めているようである。また、生合成遺伝子欠損は、生合成遺伝子であるrmyAの途中に終始コドンを導入することで達成した。欠損株と野生株の様々な性質を比較すると運動性や二次代謝産生能に違いがあることが判明し、本欠損株の詳細な解析から、ralsonin類の機能についても新しい知見が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の達成目標であったralstonin類の単離・構造決定と生合成欠損株作製を全て達成できた。特に、ralstonin類はユニークかつ複雑な構造を有していたため、NMRだけの一義的な構造解析だけでは不十分で、様々な手法を組み合わせる必要があったが、立体構造を含め完全な構造決定を達成できた点は大きいと考えている。我々が論文を発表して1か月後にドイツのグループが同じ物質の構造決定を報告しており、世界で初めてを達成できた点も成果としてアピールできる点である。さらに、新規類縁体の存在も確認しており、天然物化学分野での更なる貢献が期待できる。Ralsotnin類はPKS-NRPSハイブリット酵素であるRmyABによって生合成される。全長遺伝子欠損は不可能であったが、遺伝子内部に終始コドンを導入することで欠損株作製を達成した。欠損株では、ralsotnin産生能の消失に加え、様々な性質の変化が発見され、ralstonin類の生理機能に迫るための重要なツールになることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
構造決定できていない未知類縁体の構造決定を進める。多くの構造情報が蓄積しているため、平成30年度中に確実に達成できると思われる。Ralsotnin類の全合成と生合成に関する研究も新たに進める。特に全合成は困難が予想されるので、有機化学的に重要なユニットに注力することで進めて行く予定である。Ralstonin類がどのようにカビに作用しているのかを調べるため、RNA-seqや酵母を使った薬剤ターゲットの探索を行う。特に後者は、近年大きな実績あり注目の技術である。クオラムセンシングシグナル分子の合成アナログによるralstonin類の産生阻害についても進めて行き、青枯病菌予防薬開発への道程を確立する予定である。
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