2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19247
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寺内 一姫 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70444370)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 概日時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の重要な生命システムである体内時計の分子機構について、これまで哺乳類、高等植物、昆虫、菌類、原核生物などにおいて多くの時計遺伝子が同定され解析が進められている。各生物がもつ時計タンパク質は一次配列に有意な相同性が見いだせず、各生物が固有の遺伝子セットを有することが明らかになってきた。時計タンパク質は異なる進化的起源から固有の進化を経て創出されており、その多様性は生物進化を考える上で非常に興味深い。 シアノバクテリアは体内時計をもつ最も単純な生物であり、Kaiタンパク質から成るきわめて精緻な体内時計を有し、その体内時計は真核生物と同じ基本性質を保持している。3つのkai遺伝子がシアノバクテリアの体内時計の中核をなし、Kaiタンパク質による時計再構成系が確立している。植物の葉緑体の起源は、シアノバクテリアの祖先生物の細胞内共生によると提唱されているが、生物界全体におけるKaiタンパク質の分布は、シアノバクテリアと一部の細菌に限られ、植物はKaiタンパク質とはまったく異なる時計システムを有する。 本研究においては、共生という普遍的な生命現象によって駆動される進化を、体内時計という観点で生命の多様性が生み出された原理を明らかにすることを目的とする。 今年度は、共生系における概日的遺伝子発現パターンを解析するためのツール作成および機器の立ち上げを実施した。また、絶対嫌気性の緑色硫黄光合成細菌Chlorobaculum tepidumにおいて、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942のKaiABCを強制発現させた。その結果、絶対嫌気的な細胞内環境であっても機能的なKaiタンパク質が発現すれば、シアノバクテリアの細胞内と同じ様にKaiCのリン酸化状態が周期的に変動することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
挑戦的研究であるため、手法等ゼロからの立ち上げとなり、検討すべき課題が予測より多く発生した。また本研究は、年度途中の採択であったため、研究協力を予定していた学生の協力を得ることが難しかった。しかしながら、異生物への時計遺伝子導入およびタンパク質の発現を確認することができ、内生体内時計を人工的に別の時計システムによって撹乱するための基礎的知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究協力者を3名として、当初の計画に沿った研究を進める。また、状況に応じて新しい技術導入などを組み入れ研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
当初の計画で購入する予定の試薬等を、所属機関の研究推進プログラム研究費により賄うことができた。次年度においては、培地や一般試薬、プラスティック器具等の購入、および、研究補助者の人件費、成果発表のための学会出席の旅費として使用する。また論文の英語校閲費用と投稿料にも使用を計画している。
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Research Products
(4 results)