2017 Fiscal Year Research-status Report
DNAフリーのゲノム編集を展開するためのイネにおけるES細胞培養系の開発
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17K19255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥山 欽哉 東北大学, 農学研究科, 教授 (20183882)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 育種学 / 遺伝学 / ゲノム / バイオテクノロジー / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム編集技術ではCRISPR/Cas9などの部位特異的なヌクレアーゼを用いて標的遺伝子を自在に改変することが可能ある。マウスやゼブラフィッシュなどでは、卵細胞にCas9(DNA切断酵素) をコードするRNA(またはCas9タンパク質)、および、標的遺伝子を探し出すためのガイドRNAを導入することで、標的遺伝子改変が可能となる。組換えDNA分子が宿主ゲノムに組み込まれることはない(DNAフリー)。イネを含む植物では、Cas9タンパク質とガイドRNAを発現させるバイナリーベクターをアグロバクテリウムを用いて宿主ゲノムに組み込ませ、形質転換細胞を抗生物質などで選抜して植物体を再分化させる方法が主流である。本研究では、イネの培養細胞を動物のES細胞(Embryonic Stem Cell)に見立て、動物の卵細胞と同じ実験を行えるのではないかと考えた。 イネの細胞培養にアミノ酸培地(AA培地)を用いることで、細かくバラバラになりやすい細胞塊を得た。ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼY23)を用いて、単細胞にする計画であったが、ペクチン分解酵素のみでは単細胞化はできなかった。細胞にCas9 RNAとガイドRNAをマイクロインジェクションするための装置について検討したところ、市販されているマイクロインジェクションピペットとホールディングピペットの内径は15μmであるのに対し、イネ培養細胞の直径は10から15μmであり小さすぎることがわかった。また、緑色蛍光タンパク質GFPを発現させるRNAを細胞に導入することでマイクロインジェクションの成否をモニターする計画であったが、イネ培養細胞は自家傾向が強く、GFPの蛍光観察は困難であることがわかった。GFPの蛍光観察を行うための蛍光顕微鏡が故障し、修理不可能とメーカーより報告を受けたことから、蛍光観察できる倒立型顕微鏡を購入して対応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではマイクロインジェクションを行う計画であったが、イネの培養細胞が小さすぎて、市販されている機器では極めて実現困難であることがわかった。当初の計画通り進まないときの対応策として、プロトプラストにエレクトロポレーション法を用いて遺伝子導入する実験を行なったが、プロトプラストの生存率が低いという問題があった。ほぼ計画通りの実験に挑戦したが、期待した結果は得られなかったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、イネを材料とし、宿主ゲノムへ組換えDNA分子の組み込みがない(DNAフリー)ゲノム編集技術を開発することを目標としている。当初はイネの培養細胞にCas9 RNAとガイドRNAのみをマイクロインジェクションする計画であったが、マイクロインジェクションが困難であることがわかったので、エレクトロポレーション法とパーティクルガン法についても検討する。当初の計画では単細胞を選抜なしにそのまま培養して再分化させるシステムを開発する計画であったが、イネ種子胚も材料に加え、ゲノム編集した細胞を選抜することなく植物体を再生させる方法についても検討して、当初の目的達成を目指す。
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Research Products
(1 results)