2017 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of interspecific cross incompatibility in the genus Prunus
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17K19265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤木 剛士 京都大学, 農学研究科, 助教 (50611919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 祐人 和歌山県農林水産部(農業試験場、果樹試験場、畜産試験場、林業試験場及び水産試験場), 果樹試験場うめ研究所, 副主査研究員 (10631640)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 種間交雑 / サクラ属 / 種間障壁 / 胚発生 / トランスクリプトーム / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
サクラ属の種間交雑の組み合わせのうち、スモモxウメおよびウメxモモの正逆交雑を実施し、その後代系統の稔性に関する調査および稔性に関与する遺伝的因子の同定を試みた。 スモモxウメでは正常な個体が発生するが、花発達段階において種間交雑個体の雄機能に異常が生じることが分かっている。本研究では、複数のスモモウメ品種・系統を収集し、両親であるウメ・スモモ品種とともに花発達段階における継時的な形態学的調査を行った。その結果、スモモウメでは総じてタペート発達段階及びタペート崩壊段階において致命的な異常が生じ、粘性のある花粉形成に至らないことが明らかになった。この異常発生時点における葯サンプルからRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行う事によって、両親系統との比較においてスモモウメにおける特異的な発現パターン因子の同定を試みた。その結果、スモモウメでは多くのミトコンドリアなどオルガネラゲノムの発現に異常を生じていたことに加え、葯器官内において各小器官間の発達ステージ(フェイズ)のずれが生じて正常な花粉発達プロセスに従っていないことがこの不稔性の原因であると考えられた。さらに、両親系統のアレルはスモモウメにおいて均等には発現せず、多くの非相加的調節因子が検出された。 ウメxモモの交雑においては、ウメを種子親として用いた時にのみ交雑は成功するが、種子形成の途中段階で発生異常を示すことが明らかになった。この種子発生段階の各時期においてサンプリングを行い、正常な発生を示すウメの種内交雑サンプルとともにトランスクリプトームライブラリを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スモモウメの不稔特性化については計画以上に進展しており、多くのトランスクリプトーム解析データから、不稔に至るプロセス及び原因因子候補の同定にまで至っている。さらに、予期せずして、多くの非相加的調節遺伝子が種間交雑体から得られていることから、次年度は大規模なエピジェネティック解析(メチローム解析など)を実行する計画を盛り込むことが出来た。 さらに、ウメxモモの交雑後代において、その胚発生異常の予備的データを得ることが出来ており、次年度に向けて実際の遺伝的因子同定に向けたトランスクリプトームライブラリの作成なども既に終了している。 一方で、スモモウメの正逆交雑(ウメxスモモ)では受精が成立せず、この要因を探索するためにウメやスモモにスモモウメ(種間交雑体)を受粉して、遺伝学的観点からこのprezygoticな障壁原因を突き止めようと試みているが、上述の通り、スモモウメ自身の花粉発芽能はほとんどのもので無く、一部の限られた系統でも非常に低い事から、解析系に再検討を要する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
スモモウメを中心とした花発達段階で生じる交雑不和合性(不稔原因)については、モデル植物群を用いた原因因子の機能調査を行う。非相加的調節因子の原因について、エピジェネティックな制御が疑われるものが多く、ウメ・スモモの両親とスモモウメの葯を花発達期ごとにサンプリングし、DNAメチローム解析を行う予定である。また、スモモウメでは葯内の発達ステージのずれが原因である可能性が示唆されているため、気温調節などによって人為的に不稔性を解除する方法を検討している。これによって不稔性の解除が可能になれば、ウメ x スモモにおけるprezygotic種間障壁因子の遺伝的解析も計画通り進めることが出来ると考えられる。 ウメ x モモを中心とした胚発生段階で生じる交雑不和合性については、現段階でサンプリングしてある胚の継時的なRNAからトランスクリプトームライブラリを作成して解析することによって、種間交雑特異的に生じる遺伝子発現異常を同定する。これについても、非相加的調節因子が多く得られることを予想しており、状況に応じて、メチローム解析などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析に係る費用が想定より大幅に安価になったことにより、計画枠は変わらないまま、次年度へと大きな額を持ち越すこととなった。この使用については、本年度の結果より得られた非相加的調節遺伝子群の調査として、DNAメチローム解析を行う予定であり、このライブラリ作成費用および解析費用へと充てる。
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