2017 Fiscal Year Research-status Report
「溶けやすさ」を指標としたイネのデンプンの質を制御する遺伝資源の探索
Project/Area Number |
17K19273
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
三浦 孝太郎 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (70571561)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 湖化温度 / イネ / デンプン / GWAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、イネ胚乳中のデンプンの「溶けやすさ」を制御する有用遺伝資源・有用遺伝子を見出すために、3つのの小課題を実施した。 1.酒米及び食用米を含む日本のイネ栽培品種コレクションを用いた「溶けやすさ」を指標とした有用遺伝資源の探索 本小課題では、273系統からなる日本のイネ栽培品種コレクションを用いて「溶けやすさ」を指標として有用な形質を有する品種を見出す事を目指して研究を実施した。平成29年度は、このコレクションを実験水田で栽培し、登熟後に示差走査熱量計を用いて90%精米の米粉の湖化温度決定法により「溶けやすさ」を検定した。その結果、65.43℃から74.89℃まで分布し、平均値は70.16℃であった。この結果から、最も「溶けやすい」65℃台の5系統を有用系統として選抜した。 2.ゲノムワイド関連解析による「溶けやすさ」と関連する遺伝子変異の探索 これまでに、上記の273系統については次世代シークエンス解析により全塩基配列を決定しており、各系統につきおよそ40万箇所のSNPを検出済みである。本課題では小課題1で得た「溶けやすさ」の形質データを用いてGWASを行い、「溶けやすさ」と関連する重要な遺伝子変異を探索しており、現在解析中である。また、「溶けやすさ」と気候条件との相関を調べるために、開花期や生育気温データとの関連性を調査解析する予定である。 3.山田錦早生変異体コレクションを用いた胚乳登熟気温と「溶けやすさ」の相関解析 これまでに、40日から1週間まで開花が早くなる山田錦背景の早生変異体を10系統見出している。この早生化した山田錦を栽培し、山田錦が有する溶けやすさが成熟気温に左右される形質かどうかを調査した。その結果、山田錦の溶けやすさは、開花後20日間の平均気温に高い相関がある事を見出した。また、RNA-Seqによるこの形質に関連する遺伝子の特定も解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、以下の3つのの小課題を実施した。 1.酒米及び食用米を含む日本のイネ栽培品種コレクションを用いた「溶けやすさ」を指標とした有用遺伝資源の探索 本小課題では、当初予定の198系統から273系統に系統数を増加した。平成29年度は、このコレクションの湖化温度を予定通り決定する事ができたため、順調に進んでいると判断した。 2.ゲノムワイド関連解析による「溶けやすさ」と関連する遺伝子変異の探索 本課題では小課題1で得た「溶けやすさ」の形質データを用いてGWASを行い、「溶けやすさ」と関連する重要な遺伝子変異を探索しており、現在解析中であり、順調に進んでいると判断した。 3.山田錦早生変異体コレクションを用いた胚乳登熟気温と「溶けやすさ」の相関解析 山田錦背景の早生変異体をを栽培し、山田錦が有する溶けやすさが成熟気温に左右される形質かどうかを調査した。その結果、山田錦の溶けやすさは、開花後20日間の平均気温に高い相関がある事を見出し、研究は順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3つのの小課題に関して、今後の研究は以下の様に推進する。 1.酒米及び食用米を含む日本のイネ栽培品種コレクションを用いた「溶けやすさ」を指標とした有用遺伝資源の探索 29年度に実施した「溶けやすさ」の検定を再度実施し、再現性の確認を行う 2.ゲノムワイド関連解析による「溶けやすさ」と関連する遺伝子変異の探索 29年度に実施した「溶けやすさ」の形質データを用いてGWAS解析を完了し、重要遺伝子座を検出する。30年度には、「溶けやすさ」の形質データを再度調査し、GWASデータの再現性を確認する。 3.山田錦早生変異体コレクションを用いた胚乳登熟気温と「溶けやすさ」の相関解析 29年度に実施したRNA-Seqデータによる遺伝子の特定を完了すると同時に、再度山田錦早生変異体を栽培し、RNA-Seqデータから得られた関連遺伝子の発現をRT-PCRにより解析し、再現性を確認する。
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Causes of Carryover |
熱分析に必要なセル購入費を準備していたが、検体数が多く予定していたよりも処理に時間がかかり、未使用額が生じた。次年度に実験を継続するため、使用予定である。
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Research Products
(1 results)