2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K19280
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平瀬 祥太朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90635559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
關野 正志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (90371799)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 大型アワビ類 / 種分化 / 日本列島 / SNP / 集団遺伝 / GRAD-Di |
Outline of Annual Research Achievements |
日本沿岸で漁獲対象となっている大型アワビ類は、クロアワビ(以下クロ)、エゾアワビ(エゾ)、マダカアワビ(マダカ)、メガイアワビ(メガイ)の3種2亜種である。メガイと他の2種については形態的にも遺伝的にも分化しており、明確な識別が可能である。一方、クロ・エゾの2亜種とマダカは、形態的特徴やマイクロサテライトDNA分析によって分化が示されているものの、ミトコンドリアゲノム解析では分化は示されず、それらが生殖的に隔離された生物学的「種」であるかどうかは未だ議論の余地がある。本研究は、各地から採集されたクロ、エゾ、マダカ、メガイの複数の標本集団を対象としたGRAS-Di分析によって、大量の核SNPマーカーを取得し、種間の遺伝的類縁関係について検討することを目的とした。 クロ・エゾは北海道、青森、福島、長崎の4標本集団、マダカは新潟、徳島、神奈川の3標本集団、メガイは新潟、神奈川、徳島、大分、長崎の5標本集団を対象とした(それぞれ個体数は5個体から9個体)。これらをGRAS-Diに供し、集団遺伝学的解析を行った。 最終的に約20,000個のSNPマーカーが利用可能であった。個体の類縁関係図を作成した結果、従来の研究の通り、高いブートストラップ(BP)値によって支持されたメガイのクレード(BP=100%)とクロ・エゾ・マダカのクレード(BP=100%)が示された。さらに、クロ・エゾ・マダカのクレード内において、100%のBP値で支持されるマダカのクレードが示された。しかし、新潟のマダカの2個体は、クロ・エゾのクレードに含まれ、また、ADMIXTURE解析は、新潟のマダカ集団のみにおいて、クロからのゲノム浸透が生じている可能性を示した。以上の結果から、クロ・エゾとマダカ間に生殖隔離機構が存在するものの、その強度は地域によって異なっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GRAS-Di法の利用により、DNAの分解が進んでいるサンプルも含め、多くのサンプルからSNPマーカーを取得することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、大規模なSNPマーカーを用いた集団遺伝解析により、エゾアワビ・クロアワビとマダカアワビ間で明確な遺伝的分化が生じており、生殖的に隔離された別種であることが明らかとなった。一方、エゾアワビとクロアワビ間の生殖隔離の実態については明らかではない。来年度は、日本列島全域で網羅的に採集したエゾアワビとクロアワビのサンプルを対象とし、ゲノムワイドSNPマーカーを用いた集団遺伝解析を行うことで、それらの間の遺伝的分化のパターンを調査する。
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Causes of Carryover |
来年度に行う、GRAS-Diによるエゾアワビとクロアワビの集団ゲノミクス解析に用いる予定である。
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Research Products
(1 results)