2017 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to substitute plastic by developing extrudable clay-like wood fiber material
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17K19287
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野中 寛 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90422881)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | Woody fiber / Extrusion molding / Cellulose derivative / Lignocellulose nanofiber / Rheology / Bio-based plastic |
Outline of Annual Research Achievements |
パリ協定の採択,石油資源の枯渇に対応するためには,生分解性かつリサイクル可能な原則100 %植物素材を開発し,石油系プラスチックの生産,使用から脱却する必要がある。本研究では,法隆寺で1400年の耐久実績があり,環境中では生分解する「木材」に再注目するが,切削加工しかできず,プラスチック同様の成形加工ができないことが弱点である。そこで本研究では,木材を一度繊維化し,セルロース系の増粘剤,必要に応じて植物系可塑剤を添加して,天然物由来の粘土状木質繊維素材を開発し,押出成形により任意形状の木質材料を再構築することを目的とする。 平成29年度は,木質繊維として,ヒノキの木材チップを脱リグニンせずに,湿式でナノファイバー化した「リグノセルロースナノファイバー」(リグノCNF)を選択した。まず最初に,増粘剤を使わずに,乾燥リグノCNFのみで熱可塑成形できるか確認試験を行った。定試験力押出形細管式レオメータ-を用いて,15~200℃,60~150分,500 kgfの熱プレスを行ったところ,熱流動せず,密度0.95~1.32 g/cm3のペレットが形成された。次に含水リグノCNFのみで押出試験を行ったが,押出後は”パサパサ”で成形不能だった。そこでセルロース系の増粘剤として,ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を選択し,木質繊維:HPMCの比率,含水率を変え,混練法を工夫して粘土状木質繊維素材を調製し押出試験を試みた。本粘土状素材は,含水率が高いものほど押出す際の応力が小さいが,反面保形性が乏しく,乾燥時の寸法変化が大きくなった。また上述レオメータ-により,試験荷重増大とともに大幅に粘度が低下することを見い出し,押出時は流動,押出後の無荷重状態では粘度が高くなり,押出成形に適する性質が確認された。押出・乾燥後の成形体の強度は木質繊維:HPMC=8:2のとき最大となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時は,平成30年度に粘土状木質繊維素材の押出成形試験を計画しており,研究室保有の卓上試験機(MCT-1150,A&D)にピストン型の粘土用押出器を取りつけ,一定量の粘土状繊維を仕込んだのち一定速度でヘッドを下降させて行う予定だった。しかし平成29年度に,研究室保有の定試験力押出形細管式レオメータ-フローテスターCFT-D型(CFT-500D,島津製作所)を別予算で修理し使える状態になったため,素材の押出性評価に加え,粘度測定,荷重を変えての押出性評価もスピーディーに可能となったため,飛躍的に実験的検討が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
1. パルプを用いた粘土状木質繊維素材の調製法の確立:平成29年度は,木質繊維としてリグノCNFを選択し,当初の計画以上の進展を果たしたが,一方で木材パルプを用いた検討は少ししか行うことができなかった。今後は,各種パルプの湿式解繊,乾式粉砕などを駆使し,セルロース系増粘剤との均一な混練,粘土状木質繊維素材調製法の確立を行う。
2. 押出成形物の養生と成形品評価:粘土状繊維の押出成形物は,様々な条件(温度,湿度,時間,加圧プレス有無)で養生を行う。養生後の乾燥成形品について,収縮度の測定,密度計算,平滑性・形状崩れ・ひび割れの有無を目視確認後,卓上試験機を用いて引張試験,曲げ試験を行い,強度や柔軟性を評価する。パルプ,リグノセルロースナノファイバーそれぞれについて,押出成形性(流動性,保形性)と養生後乾燥製品の特性が総合的に優れるよう,繊維/セルロース誘導体の割合,粘土状繊維の含水率,養生条件,柔軟性付与のため植物系可塑剤(グリセリンを予定)の添加量を探索する。
3. 成形品のリサイクル性評価:乾燥成形品を,水に所定時間浸漬後,紙のリサイクル時と同様に水中で物理的に撹拌,解繊を試みる。解繊時間,水の温度,pHが主要なパラメタ―となる。得られた懸濁液を金網でろ過し,ろ別された繊維を収集し,粘土状素材としてそのままリサイクル成形可能かを検証する。別途ろ液中のセルロース誘導体の定量を行って確認し,溶出が多いようであれば,繊維とセルロース誘導体を別々にリサイクルすることも検討する。その際は,回収繊維を用いて手漉き紙を調製し,紙の引張強度,引裂強度等が,原料パルプのみから調製した手漉き紙と同等かを比較検討することにより,繊維のリサイクル性を評価する。繊維上に残留するセルロース誘導体は,むしろリサイクル紙の表面平滑性を高める作用も期待され,SEM観察や接触角測定などにより評価する。
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Research Products
(12 results)