2017 Fiscal Year Research-status Report
樹木の通道組織を利用するウッド・フローリアクターの創出
Project/Area Number |
17K19293
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古賀 大尚 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30634539)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 触媒 / パルプ / 細孔構造制御 / マイクロフローリアクター / 金属ナノ粒子 / 有機合成 / クロスカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
高効率な連続フロー有機合成を実現する次世代プラットフォームとして、固定化触媒フローリアクターに期待が集まっている。本研究では、樹木が作り上げたマイクロスケールの通道組織構造体を触媒反応流路とみなし、有機合成用マイクロフローリアクターとしての機能開拓を目指す。今年度は、①樹木組織構造体内部への金属ナノ粒子触媒の合成・固定化、および、②クロスカップリング反応における触媒性能評価を行った。 ①樹木組織構造体内部への金属ナノ粒子触媒の合成・固定化 最も汎用で高活性な触媒の一つであるパラジウムナノ粒子について、樹木組織構造体への合成・固定化を検討した。最初は木片そのものの利用を検討していたが、リグニンやヘミセルロースの影響が懸念されたため、これらを取り除いたパルプを用いて検討を行った。種々の検討の結果、酢酸パラジウムの水:エタノール(1:1)溶液中にパルプを添加して60℃で撹拌・加熱後、ろ過・洗浄・乾燥させることにより、パラジウムナノ粒子触媒固定化パルプを得ることができた。また、得られたパラジウムナノ粒子触媒固定化パルプを紙に成型することで、パルプネットワークに由来する微細流路を持つマイクロフローリアクターを調製することに成功した。 ②フロー式クロスカップリング反応における性能評価 得られた樹木材料ベースの固定化触媒マイクロフローリアクターを用いて、連続フロー式の非水系クロスカップリング反応における性能評価を行った。室温・トルエン溶媒中において、ヨウ化アリールとアルキルリチウムのクロスカップリングを行ったところ、ほぼ100%の転化率と高い生成物選択性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から、木片そのものではなくパルプで検討する方針転換を行ったものの、様々な有機合成で用いられる重要なパラジウム触媒をパルプに固定化する手法を確立することができた。また、連続フロー式のクロスカップリング反応プロセスにおいて、高い反応効率を確認できた。以上のように、今年度の目的は達成できており、本研究は順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらなる反応効率向上に向け、パルプ由来フローリアクターの微細流路構造設計を行う。また、クロスカップリング以外の触媒反応も検討し、幅広い有機合成プロセスへの応用可能性を実証する。
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Causes of Carryover |
本研究で開発する樹木ベースフローリアクターの触媒性能について、当初は、固-液-気の三相反応においてこそその優位性が実証できると考え、三相フローシステムの購入を計画していた。しかし実験の結果、固-液の二相反応においても優れた触媒性能を確認することができたため、今年度はその検討に注力した。以上の理由から、三相フローシステムの今年度購入は見送り、次年度に購入することとした。
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