2017 Fiscal Year Research-status Report
Reunion for the first time in 30 years - Challenge for experimental resource biology in sardine
Project/Area Number |
17K19295
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松山 倫也 九州大学, 農学研究院, 教授 (00183955)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | マイワシ / 生殖生理学 / 実験資源学 / 母性効果 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近年卓越年級群の出現により資源状態が回復し,ほぼ30年ぶりに親魚を入手できるようになったマイワシを対象として,生殖生理・内分泌学的観点から飼育下で産卵しない原因を解明するとともに,飼育下での再現性の高い産卵誘導技術を開発することを目的とする。 1.飼育下マイワシのモニターおよび標本採集:(独)水産研究教育機構瀬戸内海区水産研究所伯方島支所の米田道夫博士の協力を得、伯方島支所において当歳魚(0+魚)および3歳魚(3+魚)マイワシを飼育した。適宜10数尾を取り上げ、生殖腺を摘出し、雌雄を確認した後、生殖腺の発達状態をモニターした。平成29年11月に0+および3+魚を対象にして、それぞれ雌雄が10尾になるまで取り上げた。採集した標本は採血した後、血清を保存した。また脳、脳下垂体、生殖腺をそれぞれmRNAの定量用ならびに組織学的解析用に保存した。 2.生殖腺の発達段階:0+魚および3+魚ともに、雄は精原細胞~精母細胞期、雌は周辺仁期~卵黄形成初期であった。次回は、雄が精子形成期~排精期、雌が卵黄形成中期~後期の個体を採集する予定である。 3.各種生殖関連因子の遺伝子クローニング:2種生殖腺刺激ホルモン(FSH, LH)、3種GnRH(GnRH1, GnRH2, GnRH3)、2種キスペプチン(Kiss1, Kiss2)の遺伝子クローニングを行うとともに、それらの受容体遺伝子もクローニングした。現在、LH遺伝子の全長、FSH遺伝子の部分長、LH受容体遺伝子の全長、FSH受容体遺伝子の部分長、3種GnRH遺伝子の全長、2種GnRH受容体遺伝子の全長、Kiss1遺伝子の全長、Kiss2遺伝子の部分長を解読済みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
九州大学の水産実験所でマイワシを飼育する予定であったが、(独)水産研究教育機構瀬戸内海区水産研究所伯方島支所の米田道夫博士の協力もあり、瀬戸内海区水産研究所伯方島支所で飼育しているマイワシを提供していただけることになった。定期的なモニター調査に基づき、初回の採集を平成29年11月に行った。雄は精原細胞~精母細胞期、雌は周辺仁期~卵黄形成初期であった。その後、モニターを平成30年3月まで継続した結果、雌での卵黄形成中期~後期の個体が現れるのは平成30年4月頃であることが予想されたので、平成29年度は11月の1回のみの採集となった。当初、平成29年度には2回の採集を予定してが、冬季における海水温の低下等の理由により、生殖腺の発達が遅延し、2回目の採集が4月にずれ込むこととなった。 各種生殖関連因子の遺伝子クローニングを進めたが、予定していた候補遺伝子のうち、FSH遺伝子、FSH受容体遺伝子、Kiss2遺伝子および2種のKiss受容体遺伝子について、全長が解読できていない。担当学生の手技の未熟さもその一因となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、マイワシは瀬戸内海区水産研究所伯方島支所で飼育しているものを使わせていただけることになった。雌での卵黄形成中期~後期の個体が現れる平成30年度の4月に2回目の採集を行う。また、4月から5月にかけて、卵黄形成を完了した個体が出現予定であるので、それらの個体に合成GnRHを投与することにより、卵の最終成熟を誘導する。 採取した個体は、採血した後、血清を保存する。また脳、脳下垂体、生殖腺をそれぞれmRNAの定量用ならびに組織学的解析用に保存する。また、卵黄形成期、卵黄形成終了期、核移動期の卵濾胞、および排卵後濾胞を集め、-80℃で保存する。 卵の成長、成熟、排卵に伴う卵濾胞組織におけるステロイドホルモンの合成経路を、ステロイド同位体を用いたトレーサー実験で明らかにするとともに、本種の卵成熟誘ステロイド(MIS)を特定する。特定されたMISはELISA法によりその血中動態を明らかにする。 当初予定していた生殖関連因子の全ての遺伝子クロー二ングを完了し、各リガンドとそれぞれの受容体との結合親和性をレポーター遺伝子アッセイにより明らかにする。さらに、精子形成、排精および卵黄形成、卵成熟に伴う各種生殖関連因子mRNAの発現動態をRealtime PCRで明らかにする。 In situ hybridization法を用いたKissニューロン、Kiss受容体およびGnRH1ニューロンの脳内局在の解析をとおして、本種におけるKissのGnRH制御の実態を明らかにする。 以上の実験、解析を通して、本種における最も有効な最終成熟誘導法を案出し、平成30年度の春季に産卵誘導実験を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度(平成30年度)の4月にマイワシの採集を行うため、愛媛県伯方島に出張予定である。そのための主張旅費を確保した。
|