2018 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to enhance the innate immune functions by antimicrobial peptides in the hen ovary
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17K19323
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉村 幸則 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10167017)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ニワトリ卵胞膜 / サイトカイン / βディフェンシン / NFκB / Toll様受容体 / 感染防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫応答は、Toll様受容体(TLR)が微生物分子パターンを認識することから始まり、サイトカインやトリβディフェンシン(AvBDs)等の抗菌ペプチドが産生される。私達はワクチン等による刺激が、自然免疫系細胞の機能に影響し、これにはエピジェネティクスによる発現制御や免疫記憶が関わる可能性を考えている。本研究は、卵胞細胞の自然免疫機能の強化を目指し、抗菌ペプチド産生機能の解明と、この機能に及ぼすワクチン接種影響の追究を目的としている。H29年度に、微生物分子パターンが卵胞膜の炎症性サイトカインとAvBDsの産生を誘導し、この過程の転写因子にNFκBが関与することを明らかにした。次いで、H30年度はヒナに基本ワクチンプログラムに従って4種類のワクチンを接種したところ、一部のTLR発現を増強または低下させ、AvBDs発現を低下させるので、自然免疫機能に影響することが明らかとなった。この時、ヒストンH3K9ac(転写の促進)とH3K9me2(転写の抑制)が増加したので、卵巣の自然免疫記憶形成の可能性も示唆した。 一方、産卵鶏へのサルモネラ菌(SE)ワクチン接種が、卵胞の自然免疫関連分子の発現と、ヒストン修飾に及ぼす影響の検証したところ、SEワクチン接種は卵胞膜で、TLRと抗菌ペプチドAvBDsの発現を増強すること、ヒストンH3K9me2量が増加(転写の抑制)することが明らかとなった。これらのことから、ワクチン接種は卵巣の自然免疫系に影響すると考えられるので、この機能を高める有効なワクチン接種を設計するために、促進的に働くワクチンと、抑制的に働くワクチンを同定する必要があることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29と30年度に予定していた、微生物分子パターンにより卵胞膜の炎症性サイトカインとAvBD産生が誘導されることを実証でき、またワクチン接種が卵巣の自然免疫分子の発現やヒストン修飾を誘導することも明らかにできたので、進捗状況はほぼ計画通りで順調である。AvBD以外の抗菌ペプチドであるカテリシジンの抗体も作製できたので、今後はこれを用いて解析の幅を広げることができると考えている。ヒナの飼育施設が小規模であったので供試羽数が制限されていたが、施設を追加して供試羽数と飼育日数の拡張を図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣の自然免疫関連分子の発現を強化できるワクチンを見出すために、個々のワクチンが自然免疫機能に及ぼす影響と、ヒストン修飾を始めとするワクチンが影響する機構の解明、有効なワクチンの探索を目指した研究を推進する。 これまでヒナの飼育施設が小規模であったので、供試羽数と実験処理区の設定供試羽数が制限されていた。H31年度はいろいろなワクチン接種が自然免疫機能に及ぼす影響を調べ、この機能を高めるワクチンプログラムの基礎的知見を得る予定である。このために、飼育羽数や飼育日数の拡張を図る必要があるが、現在このための育雛設備の導入準備を行っている。
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Causes of Carryover |
カテリシジン(抗菌ペプチド)の抗体を新規で作製した。次年度にはこの抗体の特異性等を検証するための合成ペプチド等の経費が掛かるので、次年度使用額をこれに充てる。
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Research Products
(5 results)