2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of molecular mechanism of transcription reaction by zero-mode waveguides
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17K19351
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 慶恵 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (10202269)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 生物物理 / ナノバイオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一連の転写反応の分子機構を明らかにするために、1塩基の転写過程の可視化を目指している。このめには、基質として数十μMの蛍光標識ヌクレオチド存在下での観察が必要であるので、高濃度蛍光基質の可視化が可能なナノ開口(zero-mode waveguides)という手法を改良し、直径50 nmのナノ開口基板作製法の確立を目指している。 我々は、これまでに、電子線描画装置を用いて、直径約100 nm のナノ開口基板作製手法を確立し、Holliday 構造DNA 結合タンパク質であるRuvB タンパク質とDNA の相互作用の解析を行ってきた。本年度は、50 nmの作製に挑戦するために、基板作製手順や、表面処理の最適化を行い、基板間のバラつきを抑える事に成功した。 一方で、従来、ナノ開口基板の底に分子を固定化する際は、(位置制御することなく)、固定化していたので、必ずしもナノ開口の中心部に固定化されるわけではなく、基板を形成する遮蔽金属(アルミニウム)の傍に固定される分子もあった。金属近傍に固定化された分子は、蛍光色素が金属と相互作用し、増強や消光といった現象を引き起こすため、観察シグナル強度が、ナノ開口の孔ごとにバラつく原因となっている。直径を小さくするに従って金属近傍に固定化される分子の割合が増えるので、何らかの手段で、分子を孔の中心部に固定化する必要である。そこで、我々は、ナノメートル精度で分子を固定化であり、2次元・3次元のナノ構造物を自在に作成可能な、DNAオリガミ技術に着目してきた。まずは、溶液中で転写系をDNAオリガミ上に固相化した転写ナノチップを構築し、活性評価を行った所、十分な活性を有する事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、従来我々が作製してきた直径約100 nmのナノ開口基板を改良し、直径50 nmのナノ開口基板作製法の確立と、転写反応の観察を目指している。 本年度は、主に、①基板作製法の改良、②ナノ開口の底の中心部に分子を結合させるためにDNAオリガミ技術を用いて転写チップを作製する事に注力した。 ①基板作製法の改良では、まず、問題となったのが、電子線描画の精度と再現性である。ナノ開口作製では、1つ1つの孔の形を描画するが、その描画精度は、描画する際のペン(筆)にあたる電子線の太さに依存する。現在使用している描画装置では、描画速度を高速にし、ナノ開口基板を大量に作製する為に、マスクパターンを投影する方式を採用している。その一方、描画精度(10 nm)に関しては、通常用いられる一筆書きでパターンを描画するタイプ(2 nm)に比べて劣っている。そこで、描画精度・再現性をできるだけ維持できる条件の検討を行い、我々の試料に最適な条件を決定し、50 nmから100 μmまでの様々なサイズ・形状の開口を自在に作成できるようになった。また、ナノ開口を使用する際は、観察分子の非特異的相互作用を抑えるために、遮蔽金属(アルミニウム)や底部ガラス表面の表面処理が重要であるので、条件を見直して、バラつきが少なくなるような条件を決定した(投稿準備中)。 ②転写ナノチップの作製では、T7 RNAポリメラーゼ(RNAP)と、標的遺伝子をDNAオリガミ上に固定化し、転写活性を測定した。その結果、RNAPと標的遺伝子の固定間距離によって、転写活性が変わる事を見出した。逆にこの性質を用いて、転写活性の合理設計や、シグナル分子(miRNAや蛋白質、低分子化合物)による転写活性の制御を実現した(査読中)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに最適化してきた、2つの鍵技術(トップダウン技術(ナノ加工)を用いた基板作製)とボトムアップ技術(転写ナノチップ作製))を組合わせていく。組み合わせに関しては、様々な条件を検討する必要があるが、両方の鍵技術ともに、大量に安定して調整する技術を磨いてきたので、広範囲な条件検討が可能であると期待される。 基板作製では、より細かな、描画条件の検討を引き続き行うと共に、より効率的・安定的に作製するための表面処理条件の検討を行う。転写ナノチップ作製では、従来のT7 RNAPに加え、真核(酵母)のRNAP(Pol II)を用いた転写反応を展開していく。具体的には、酵母より調整したPol IIをDNAオリガミに固定し、酵母や大腸菌より調整した基本転写因子を用いた転写反応の解析を行う。その際、現状は、DNAオリガミ上にヌクレオソームを固定化する効率が悪いので、その改良も行っていく。また、DNAオリガミをナノ開口底部に固定化する際は、DNAオリガミの形状や、表面・末端修飾の影響が考えられるので、これらの条件検討も行う。 これらの条件の検討を通じて、一連の転写反応の分子機構をリアルタイムに観察する技術の確立を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、ナノ開口の底に固定するDNAナノ構造の形状を様々に検討する予定であったが、DNAナノ構造の活性評価が予想以上に進展したため、本年度は、活性評価に注力した。DNAオリガミは、1本の長い1本鎖DNA(7-8k塩基)に多数の短い1本鎖DNA(40塩基程度が200本程度)から構成されるが、前者は、同じ長鎖DNAを用い、後者は構造毎に違う配列の組み合わせセットを用いる。本年度購入を予定していたDNAナノ構造の材料(短い1本鎖DNAのセット)の購入を翌年度に延期したため、次年度使用額が生じた。
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[Presentation] Rational design of orthogonal gene transcription nano device on DNA origami2017
Author(s)
Takeya Masubuchi, Masayuki Endo, Ryo Iizuka, Ayaka Iguchi, Dong Hyun Yoon, Tetsushi Sekiguchi, Hao Qi, Ryosuke Iinuma, Yuya Miyazono, Shuichi Shoji, Takashi Funatsu, Hiroshi Sugiyama, Yoshie Harada, Takuya Ueda and Hisashi Tadakuma
Organizer
CBI(情報計算化学生物)学会
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[Presentation] DNAオリガミを用いた直行性を有する転写デバイスの合理的設計2017
Author(s)
増渕岳也, 遠藤政幸, 飯塚怜, 井口彩香, Dong Hyun Yoon, 関口哲志, Hao Qi, 飯沼良介, 宮薗侑也, 庄子習一, 船津高志, 杉山弘, 原田慶恵, 上田卓也, 多田隈尚史
Organizer
生命科学系学会合同年次大会
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