2018 Fiscal Year Research-status Report
Micromechanics of the mitotic chromosome
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17K19362
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
島本 勇太 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 准教授 (80409656)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 染色体 / 機械特性 / 力計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞分裂期における遺伝的フィデリティが染色体に作用するメカニカルな力によっていかに保証され、またそれがどのようなメカニズムで破綻するかを理解することを目的としている。具体的には、定量的なオルガネラのマイクロマニピュレーション技術と生化学摂動実験を組み合わせた実験系を構築し、分裂期染色体の力学応答特性を直接的に明らかにすることを目指す。当該年度は、過年度までに構築したガラス製マイクロニードル(直径1ミクロン程のファイバー状の計測プローブ)を基礎とする顕微力学計測装置とアフリカツメガエル卵から調製される無希釈の細胞質抽出液を融合した実験系を用いて、紡錘体微小管を介して分裂期染色体に作用させた力が染色体の変形ダイナミクスに与える影響や、作用させた力が姉妹染色分体間の解離ダイナミクスに及ぼす効果を定量的に決定した。特に、作用させる力の速度に応じて染色体腕などの特定部位が極度に伸張したり、姉妹染色分体間の解離が促進される様子を蛍光イメージング解析によって捉えることに成功した。さらにこの実験系に薬剤阻害アッセイを組み合わせることで、分裂期の染色体が持つ力感受性に特定のDNA結合因子が関与していることを示唆する結果を得た。また、種間でのメカニズムの保存性を評価するため、ヒトの細胞株から分裂期染色体を単離精製する方法を新たに導入し、顕微鏡下でヒト染色体の力学特性を定量的に決定・評価するための予備実験を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標であった分裂期染色体の力学特性解析について、染色体の集団挙動を細胞質環境を維持した条件下で計測し、力の効果を定量的に決定することができたため。また、次年度の目標である分子摂動実験について、注目する染色体構築因子の関与を示唆する結果を得ることができたため。さらに、過年度に推進方策として挙げたヒト細胞を用いた解析について実験系を立ち上げることができたため。一方、染色体上の特定部位を捕捉する方法やサンプル間のばらつきなど、今後の詳細な解析に向けて検討すべき点が新たに見つかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までに確立した染色体の単離・マイクロマニピュレーション技術を用いて単一染色体の機械特性を局所で解析評価できるようアッセイ系を改良する。これを実現するために、抗体等を用いた染色体上の特異部位の標識を行い、力計測プローブとの結合を試す。また、サンプル間のばらつきの原因を探るため、染色体のそれぞれを構造的もしくは配列的特徴から分類し、機械特性との相関を解析する。これに当該年度に手がかりを得た分子摂動実験を組み合わせ、染色体の力学応答特性の決定と分子メカニズムの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品の購入が不要となったため。次年度に必要な消耗品の購入、研究成果発表に必要な経費等に有効に活用する。
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