RNAiが簡便なカメムシ培養細胞株の樹立と分散型動原体の研究

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K19376
• Research Institution: Ibaraki University
• Principal Investigator: 二橋 美瑞子 (長内美瑞子) 茨城大学, 理学部, 准教授 (00422402)
• Project Period (FY): 2017-06-30 – 2020-03-31
• Keywords: 動原体 / RNAi / 培養細胞 / ホソヘリカメムシ

Outline of Annual Research Achievements

動原体は、真核生物の染色体に欠かせない重要な構造の一つであり、細胞分裂の際、複製した染色体を娘細胞に引っ張る紡錘糸が結合するタンパク質複合体である。多くの真核生物は、動原体が染色体の一か所にある局在型動原体を持つが、一部の真核生物は、動原体が染色体中に散らばっている『分散型動原体』を持つ。分散型動原体をもつ染色体は切断されても世代を超えて維持される場合があるなど興味深い性質がみられる。分散型動原体は真核生物の進化の過程で10回以上独立に出現しているものの、その分子機構は線虫以外の生物では未解明な点が多い。
本研究では、分散型動原体の研究材料としてホソヘリカメムシ（カメムシ目昆虫）に着目した。ホソヘリカメムシでは、実験生物として極めて有利な性質である二本鎖RNAを体腔中に注入するだけで全身の細胞で遺伝子機能が抑制される「全身性RNAi」応答が引き起こされ、ホソヘリカメムシは分散型動原体遺伝子の研究に良い材料であるといえる。また、「全身性RNAi」応答が引き起こされる甲虫コクヌストモドキから作出した培養細胞はその性質を受け継ぐことが報告されているため、ホソヘリカメムシから培養細胞株を樹立できれば、トランスフェクション試薬なしにRNAiを引き起こすことが出来る可能性が高い。
そこで、本研究は、RNAiが簡便に効くと予想され、広範な用途が期待されるホソヘリカメムシの培養細胞株を樹立し、培養細胞と個体を併用して、RNAiを用いた分散型動原体の染色体分配に寄与する遺伝子の機能解析を行うことを目的とする。これまでに、ホソヘリカメムシの組織を培養したところ、組織からの細胞の移動または分裂に由来する細胞が見られたので、現在継代条件を検討中である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ホソヘリカメムシ胚の孵化率が悪い時期があったため、細胞培養の条件検討及び個体実験の条件検討が遅れている。

Strategy for Future Research Activity

ホソヘリカメムシ胚の孵化率が回復したため、細胞培養に最適な条件の検討と、個体の組織での細胞分裂や染色体の観察方法を検討し、体色の変化で判定できるlaccase 2遺伝子でRNAiが働くことを追試した後、動原体遺伝子のRNAi処理を行い、表現型を観察する。また、卵の孵化率の悪化を回避する餌や飼育条件を検討する。

Causes of Carryover

卵の孵化率が悪い時期があったため、インジェクション装置の購入を延期した。