2018 Fiscal Year Research-status Report
利他行動・利己的行動を駆動するゲノム内対立:社会性昆虫の女王分化での検証
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17K19381
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡田 泰和 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (10638597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土畑 重人 京都大学, 農学研究科, 助教 (50714995)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 利他行動 / カースト分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
トゲオオハリアリの脳内,および脂肪体での発現遺伝子について,順位によるカースト分化に伴って発現が変化する遺伝子を比較トランスクリプトーム(RNAseq)および,リアルタイム定量PCRにより特定し,より広い日齢範囲に拡張した発現解析を引き続き進めている.インスリンシグナルなど,代謝や繁殖にかかわる遺伝子や,脳内生体アミンの合成,受容などに関わる因子,糖・脂質・アミノ酸代謝経路の遺伝子が数多く見つかった.そこで,脂質量の定量や脂肪体の組織観察を行い,カースト差について予備的な結果を得ている.これらのカースト特異的遺伝子や生理状態をつかめたことは,今後のインプリンティングの比較解析の土台となる. また,ワーカーの示す様々な利他行動についても解析を進め,個体間の相互作用が活動性や概日リズムに大きく影響することを突き止めた.行動レベルでも相互作用にもとづく社会行動の新たな調節機構が発見できた. ゲノム解読については,その手法についてさまざまな条件検討を行い,適した条件の検討がほぼ整った.これまで,Chromiumによる疑似ロングリードを組み合わせたゲノムシーケンスを行い,ドラフトゲノム配列を得ている.また,PacBioによる長鎖シーケンスを現在行っており,質の良いゲノムとするため,アノテーションなど生物情報学的解析の段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム解析については,Pacbioと新規システムChromiumの併用によるシーケンスを行い,両者を合わせて質の良いゲノム情報を得る予定であるが,着実に実験が進んでいる.Chromiumは従来の手法より精度・価格の面でまさるが,昆虫への導入例はまだ非常に少ないため条件検討にやや時間を要したが,現在までの解析では良質のゲノムが得られているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
ワーカーは,高齢になるほどより利他的,自己犠牲的な行動をとるため,より広い日齢範囲に拡張した発現解析を進め,利他行動関連遺伝子を脳・脂肪体に着目して特定を進めていく.これまで得られているドラフトゲノム情報に,さらにPacBioやトランスクリプトームのデータを統合して,良質のゲノム,アノテーション情報を得る.その上で利他的遺伝子の発現解析,インプリンティング解析を行う.
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Causes of Carryover |
今後もゲノム配列解析,トランスクリプトーム解析が続くため,これらの次世代シーケンス解析にむけて,予算を十分に確保するため,次年度使用額が生じている.
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Research Products
(7 results)