2017 Fiscal Year Research-status Report
月周時計の実体解明への挑戦:月周産卵フグを用いた分子基盤の確立
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17K19385
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
安東 宏徳 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60221743)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 月周時計 / 概日時計 / 産卵リズム / 松果体 / クリプトクローム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新月と満月の日に海岸で繰り返し産卵するクサフグを用いて、半月周性の産卵リズムを刻む生物時計の分子基盤を確立することを目的とする。そのため、クサフグの視床下部と松果体のRNA-seq解析と概日時計遺伝子の一つであるクリプトクローム(Cry)の発現抑制実験を行い、Cryと相互作用を持つ月周発現分子を網羅的に探索する。これらの実験から、月周時計を構成する分子群と月周時計の調節を受ける分子群の候補を同定する。平成29年度では、下の2つの研究を実施した。 1.産卵期にクサフグを採集し、水槽内で自然光条件下で飼育した。月齢に合わせて5日おきに7回、暗期の中点(23時30分)に脳と血液を採取した。脳から視床下部と松果体の試料を、また血液から血漿試料を調製した。血漿中のメラトニン濃度を質量分析法により測定した結果、暗期におけるメラトニン濃度は月齢に伴って変化することが明らかになった。 2.Cryの発現抑制実験系を確立するための基礎的知見として、脳内のCry発現細胞の局在を明らかにするため、Cry遺伝子の特異的RMAプローブを調製し、産卵期にクサフグを採集して脳固定試料を調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、月周発現遺伝子の網羅的解析として、RNA-Seq法による解析を予定していたが、本実験用に調整した松果体試料が解析に十分な量に足りなかったため、松果体のRNA-seq解析が実施できなかった。また、Cryの発現抑制実験については、脳内の発現細胞の同定に至らなかったため、発現抑制の解析に用いる実験系の検討ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-Seq法による解析用の脳試料について、産卵期に採集するクサフグの個体数を増やして解析に十分な量を確保し、視床下部と松果体試料のRNA-seq解析を実施する。月齢発現変動する遺伝子群を選び出し、その発現細胞の脳内局在を同定する。また、Cry発現細胞について、抗Cry抗体を作製し、in situ ハイブリダイゼーション法に加えて免疫染色法によって発現細胞の同定を行う。そして、月周発現遺伝子産生細胞とCry発現細胞の神経解剖学的な関係を多重免疫染色法で明らかにすると共に、Cryの発現抑制による月周発現遺伝子群の発現量の変化を解析して、月周発現分子群とCryとの機能形態学的な関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
月周発現遺伝子の網羅的解析として、RNA-Seq法による解析を予定していたが、解析に必要な脳試料を採取することができず、実施できなかった。H30年度においては、クサフグの採集個体数を増やして、解析に十分な脳試料を確保し、繰越金額を当初の予定通りにRNA-seq解析に使用する。
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Research Products
(11 results)