2018 Fiscal Year Research-status Report
Molecular basis for the imprinted memory
Project/Area Number |
17K19386
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西住 裕文 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30292832)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 遺伝子改変マウス / 刷り込み記憶 / 臨界期 / シナプス形成 / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
生体の発達初期において、外界から刺激が与えられた際、その効果が最も良く現れる時期は臨界期と呼ばれる。カモの雛が孵化した直後の臨界期に、初めて見た動く物体を親と記憶し追従するようになる刷り込みは有名であるが、その分子メカニズムは未解明である。我々は長年、マウスを用いて嗅覚系の研究を行ってきた。その過程で、生後一週間の臨界期にマウス新生仔の鼻腔を塞ぎ嗅覚入力を遮断すると、その後閉塞を解除しても嗅覚能力が低下し、社会行動に異常が現れる事を見出した。一方、臨界期に特定の匂いを提示した所、この個体は成体になった後もその匂いに愛着を示すようになった。そこで本研究では、臨界期に脳内で何が起きているのか、嗅覚神経回路形成を中心にその分子基盤を明らかにする事を目指した。 まず、臨界期に特定の匂いを嗅がせ、Sema7Aシグナルによるシナプス形成を積極的に促進した場合、何が起こるかについて解析を行った。その結果、嗅がせた匂いに反応する嗅細胞と僧房細胞間のシナプス形成が増強され、検出感度も上昇していた。また驚いたことに、嗅がせる匂いの質感が先天的に中性や忌避性であっても、臨界期に嗅がせて刷り込むことで、成長後のマウスはその匂いに対して誘引性の行動をとるようになることを見出した。そこで、匂い刷り込みによって特異的に活性化されるようになる脳領野がないかを、嗅皮質、扁桃体、海馬など脳全体に渡って、神経活動依存的に発現するEgr1を指標に免疫染色を行った。その結果、臨界期に嗅がせて刷り込んだ場合にのみ、その匂いで扁桃体内側前部が活性化され、誘引行動を誘導することが明らかとなった。更に、この刷り込み記憶の誘引的な価値付けに、臨界期に脳内での発現濃度が上昇するオキシトシンの関与が疑われたので、オキシトシン分泌異常マウス(CD38 KO)を調べたところ、匂い刷り込みによる誘引的価値付けがなされないことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進み、計画していた以上に実験を行うことができた。しかし、研究成果を論文としてまとめるに当たり、査読者からの指摘で追加実験を行う必要が生じ、研究期間を延長するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をまとめ、論文を現在投稿中である。その論文中で、嗅覚刷り込み記憶に誘引的質感を付与する機構を明らかにするために、オキシトシン分泌異常マウス(CD38 KOマウス)を用いて解析していたが、査読者らからの指摘を受け、オキシトシンKOマウスを用いて実験をやり直す必要が生じた。従って、補助事業期間を一年延長して追加実験を行い、研究成果を論文として完成させると共に、学会でも積極的に発信していく。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進み、計画していた以上に実験を行うことができた。そして研究成果をまとめ、既に論文を投稿中である。しかし、その論文に付いた査読者らから指摘を受け、追加実験を行う必要が生じている。従って、補助事業期間を一年延長して追加実験を行い、研究成果を論文として完成させると共に、学会でも積極的に発信していく。
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Research Products
(7 results)