2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19392
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 求 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (80551499)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 概日時計 / 長距離シグナル伝達 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
概日時計は地球の自転による約24時間の明暗周期や季節変化に対応するためのメカニズムであり、多くの遺伝子の発現制御に関わっている。こうした概日時計の仕組みは、ほぼ全ての細胞に見られ、動物では脳の時計が神経や体液を通じて末梢の時計を制御していることが知られている。植物ではそのような仕組みは知られていないが、単なる細胞の集合体ではなく多細胞生物として協調的に環境応答を行うためには、個々の細胞が持つ時間情報を統合する仕組みが植物にも存在していると考えられる。 最近、申請者らは植物にも動物と同様に概日時計の組織特異的な機能分担が見られることを発見した。また、別の研究者グループの報告から地上部の時間情報が地下部へと伝わっている可能性が示唆されている。さらに、申請者は根から取り込まれたカリウムなどの無機イオンが地上部の概日時計を制御しうることを見出している。これらを総合すると、植物における時間情報の共有は地上部から地下部への篩管と地下部から地上部への道管を通じて行われている可能性が考えられた。 そこで本研究では、組織ごとに概日リズムを計測することで、離れた2つの組織間で時間情報がどのように伝わるのかを明らかにする。さらに、道管・篩管への取り込みに関わる トランスポーターの発現や活性、そして実際の道管液・篩管液の濃度に概日リズムが見られるかどうかを検証することで、時間情報を媒介する物質の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリウムが根から地上部へと輸送され、概日リズムの周期の安定性に関わっていることを明らかにできた。この結果は、これまでに想定されていなかった根と地上部の間での時間情報のやり取りの可能性を強く示唆するものであり、引き続き研究を進めることで、植物における時間情報の認識機構が明らかになると想定される。 また、申請書に記載したその他研究についても概ね順調に成果が出ており、計画に遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
カリウムがどこで、どのように概日時計を制御しているかを明らかにするために、葉におけるカリウムの局在を調べその場でのRNA-seq解析を行う。他の植物種では柵状組織に高蓄積することがしられているため、申請者らはすでに柵状組織と海綿状組織を単離する技術を開発している。 また、道管内カリウム濃度のリズムが重要であることをしめすために、ICP-MSを用いて道管内のカリウム濃度の定量を行うと共に葉における概日リズムとの関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末に異同が確定し、引越の準備等で実験を継続できず、異動後に実験を再開した方が合理的であると考えられたため
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