2018 Fiscal Year Research-status Report
システインのリン酸化 ~新しい翻訳後修飾の仕組みと役割の解明~
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17K19396
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
船戸 洋佑 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60505775)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | PRL / システイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がん悪性化に関わるPRLの活性中心のシステイン残基の性状や役割について解析するものである。PRLはチロシンホスファターゼファミリーに属しており微弱なホスファターゼ活性を有する。一方でMg2+輸送体CNNMへの結合とその阻害という機能も明らかとなっており。この2つの機能のいずれもに活性中心のシステイン残基が必要であると知られている。このどちらがPRLによるがん悪性化に重要なのかを明らかにする目的で、活性中心のシステインを種々のアミノ酸に置換した変異体を作成した。その結果、システインをアスパラギン酸に置換したC104D変異体ではCNNMへの結合が維持されており、ホスファターゼ活性とCNNMへの結合との切り分けが可能な変異体の作成に成功した。この変異体の結晶構造を取得したところ、ちょうどシステイン残基がチオレートイオン化した状態と非常によく似ており、そのためCNNMへの結合が可能であったと判明した。またこのシステインをグルタミン酸に置換したC104E変異体の構造はシステイン残基がリン酸化された状態と類似しており、実際この変異体はCNNMとは結合しなかった。この変異体群をB16細胞に安定発現させ、C57BL/6Jマウスの尾静脈から導入したところ、C104D変異体発現細胞を導入した際には野生型PRL発現細胞を導入した際と同様に多数の腫瘍が肺に形成されていた。一方で、C104E変異体では腫瘍はほとんど観察されなかった。これらの実験結果より、PRLによるがん悪性化にはホスファターゼ活性ではなく、CNNMへの結合が重要であることが明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
システイン残基を介した機能のうち、CNNMへの結合が重要であることが明確となったほか、種々の変異体の結晶構造からシステイン残基のリン酸化がやはりCNNMとの結合を制御していることが確認され、PRLが機能する分子メカニズムがより明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの変異体群を用いたさらに詳細な解析を行うことで、PRLのシステイン残基やそのリン酸化の生物学的な意義を追究することを予定している。
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Causes of Carryover |
当初の想定より少ない条件検討で実験計画が進行し、一方で今後行うマウス実験の重要性が大きくなったため、その分に備えて次年度使用額を生じさせた。
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Research Products
(6 results)