2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19397
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 薫 (佐藤薫) 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00447921)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 神経堤細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の神経堤細胞は脊椎動物の胚発生において神経・表皮境界領域から生じ、体の様々な場所に移動して神経細胞、グリア細胞、色素細胞、骨や軟骨など、様々な細胞に分化し脊椎動物の体を作る上で重要な役割を果たしている。海産無脊椎動物ホヤは脊椎動物と同じ脊索動物であるが、神経提細胞は持っていない。したがって、脊椎動物の進化の過程で、神経・表皮境界領域の細胞が移動能と多分化能をもつことによって神経提細胞が生み出されたのではないかと考えられている。しかし、ホヤでも、神経・表皮境界領域からできる細胞が,不完全ではあるが神経提細胞に似た性質をもつことが報告されている。本研究では脊椎動物の神経提細胞形成のネットワークとホヤの神経・表皮境界領域における遺伝子ネットワークを比較し、ホヤで欠如しているネットワークを補うことにより、ホヤに人為的に神経提細胞を作りだすことを試みた。ホヤで欠如しているネットワークの構成遺伝子のうち重要と思われるいくつかの遺伝子について、ホヤ胚に伝子導入するためのコンストラクトを作成し、これらの遺伝子を導入したホヤ胚の表現型を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊椎動物の神経提細胞形成のネットワークとホヤの神経・表皮境界領域における遺伝子ネットワークを比較すると、ホヤでも共通のサブネットワークが多く見つかるが、神経提細胞を特殊化するネットワークや、細胞の移動や分化をつかさどるネットワークの一部が欠けている。これらホヤで欠如しているネットワークの構成遺伝子のうち重要と思われるいくつかの転社因子をコードする遺伝子(TFAP2, myc, SoxF, FoxD)について、ホヤのネットワークを人工的に補う遺伝子導入実験のためのコンストラクトを作成した。具体的には、ホヤの神経・表皮境界領域で発現を誘導するmsxb遺伝子のエンハンサー領域にこれらの遺伝子をつないだコンストラクトを作成し、これらのコンストラクトをホヤの胚に導入したところ背側神経・表皮境界領域においてTFAP2, myc, SoxF, FoxDが発現することを確認した。これらの遺伝子を導入した胚において神経堤細胞特異的遺伝子の発現が誘導されているか確認したところ、いくつかの遺伝子については発現が認められた。しかし、これら細胞が神経堤細胞のように移動していく様子は観察されない。おそらく移動に必要な遺伝子が誘導されていないと思われるので、その原因を探るために発現している遺伝子を詳しく解析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
脊椎動物の神経提細胞遺伝子ネットワークとホヤのネットワークを比較してところ、ホヤで欠如している遺伝子の数は少なくとも10個あり、このうちの4つの遺伝子(TFAP2,myc,SoxF, FoxD)についてエレクトロポレーション法によりホヤ胚へ導入し尾芽胚期の胚の神経・表皮境界領域で発現させた。これらの胚で異所的に神経堤細胞が誘導されているか、神経堤細胞に関する論文を参考に選んだマーカー遺伝子の発現の有無を見ることにより検証している。「現在までの進捗状況」で述べたようにこれらの遺伝子を導入した胚において神経堤特異的遺伝子のうちいくつかの発現が誘導されていない。この解決方法としてTFAP2, myc, SoxF, FoxD以外の候補遺伝子をさらに導入するなどして神経堤細胞様の細胞を作り出せるのかどうか探っていきたい。とくにこうした細胞が移動する能力を獲得するかどうかに注目する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計画通りに進まなかったため、購入する予定であったキットなどを次年度に購入することにしたため
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