2019 Fiscal Year Research-status Report
振動子としての細胞周期制御系の特徴とその生理学的性質のリンク
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17K19401
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村山 依子 (井上依子) 早稲田大学, 理工学術院, 日本学術振興会特別研究員 (70750925)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカツメガエル受精卵の最初の10数回の分裂はだいたい同調して23℃では約30分周期で起こる。また、擬似的に受精時の応答を誘起した未受精卵を遠心分離してゲノムDNAと細胞膜を除去すると、可溶性画分でS期とM期の移行が2~3回繰り返される(サイクリング抽出液)。このように細胞周期制御系のコアの部分は振動子であると考えられるにも関わらず、細胞周期をリズムと捉えて研究した例はあまりない。本研究では、細胞分裂が環境温度を変えると起こらなくなる現象に着目している。「分裂が起こらない=リズムがなくなる」現象の理解には、非線形動力学の分野で知られている分岐理論が有効である。分岐理論を利用して振動子の性質をあぶり出すアプローチはシアノバクテリア概日リズムの低温停止現象の研究で実績があり(Murayama et al, 2017, PNAS)、本研究でも細胞周期制御系の振動子としてのマクロな性質を明らかにすることができると考えている。細胞周期をリズムとして研究するには、概日リズムを発光レポーター遺伝子を用いて生物発光としてリアルタイムモニターしているように、細胞周期進行を可視化するためのレポーターシステムが不可欠である。アフリカツメガエル細胞周期の進行を可視化した先行研究はいくつかあり、有糸分裂タンパク質のリン酸化/脱リン酸化サイクルをモニターできる発光プローブの導入を進めた。レポーターシステムを使って周期、振幅、位相、波形等のリズムの特徴をとらえ、細胞周期の振動子としての性質に迫る研究を効率的に進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業は2017年11月から中断をしていたが、2020年1月から再開した。 細胞周期の進行を可視化するためのレポーターシステムの導入は、細胞周期をリズムとして解析するための重要なポイントである。本年度は発光プローブの導入を進めており、温度に対する特性など目的の機能を持つか確認していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きアフリカツメガエルの細胞周期のリズムをより長く、より簡便に観察できる実験系の検討を続ける。アフリカツメガエルの細胞周期の観察には発光プローブの他、核膜の破壊/再形成や分裂後期に分解されるタンパク質の量の変動を蛍光タンパク質を用いて検出する方法もある。またサイクリング抽出液の体積を小さくすることで、2~3回でリズムが減衰してしまう現象が食い止められ、長期間自律的な振動が観察できるという報告がある。本研究に適したレポーターシステムを用い、細胞周期の振動子としての性質を明らかにする計画を進める。
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Causes of Carryover |
本事業は2017年11月から中断をしていたが、2020年1月から再開した。今年度は研究期間が3ヶ月と短かったため、使用額が少ない。次年度も計画どおりに研究を進める。
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