2021 Fiscal Year Research-status Report
振動子としての細胞周期制御系の特徴とその生理学的性質のリンク
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17K19401
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村山 依子 (井上依子) 早稲田大学, 理工学術院, 日本学術振興会特別研究員 (70750925)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカツメガエル受精卵の最初の12回の卵割は18℃では約35分周期でおこるが、受精卵を極めて低い温度におくと分裂しなくなる。温度を下げたときに「分裂が起こらなくなる=リズムがなくなる」現象の理解には、非線形動力学の分野で知られている分岐理論が有効である。分岐理論を利用して振動子の性質をあぶり出すアプローチはシアノバクテリア概日リズムの低温停止現象の研究で実績があり、本研究でも細胞周期制御系の振動子としてのマクロな性質を明らかにしたいと考えている。受精卵の卵割周期は13℃で約85分、10℃で約125分と低温では長くなる。10℃を下回る温度では受精卵の発生が途中で止まるようになり、9℃では約215分周期で最大3回の卵割が観察されたが、6℃では一度も分裂しなかった。低温ほど周期が長くなることから、周期が無限大になってリズムが停止するSaddle-node on an invariant circle(SNIC)分岐のシナリオで細胞周期のリズムが消失していることが示唆される。SNIC分岐のシナリオでは分岐点に近づくほど僅かな温度差で周期が劇的に変わる。低温ほど卵割周期のばらつきが大きくなる傾向が観察されていることと関連するかもしれない。細胞周期の振動子としての特徴をさらに解析するためには、細胞周期レポーターを用いてリズムを連続的に観察する必要がある。先行研究を参考にレポーターを準備し、低温環境でもある程度使用できそうな感触を得ているが、コロナ禍で測定に必要な機器の入手が遅れている。アフリカツメガエル卵を遠心分離して得られるサイクリング抽出液のリズムをレポーターを使わずに検出する方法では振幅などのリズム成分の抽出が難しく再現性を取りづらかったため、研究期間を1年延長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画を行う上で必要だった機器が故障し修理できなかったため、本年度は機器の購入を試みた。コロナ禍で海外で製造された機器の納入に通常より時間がかかることは承知していた。しかし納入直前の動作チェックで不具合が見つかり、再度製造された機器が海外から運ばれてくることになり今年度中の入手がかなわなかった。このため、この機器を使う予定だった実験に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞周期レポーターを用いてリズムを連続的に観察することは、細胞周期の振動子としての特徴を理解する計画を進める上で重要なポイントとなっている。コロナ禍で入手が遅れてしまっている機器を購入したら直ちに測定を開始し、当初の計画に沿った研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究計画を進める上で必要な機器の購入を試みたが、今年度中の納入がかなわなかった。次年度に購入するための予算を残している。
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