2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性関節リウマチの病態生理における分泌小胞としてのエクソソームの役割
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17K19405
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
奈良場 博昭 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (90296517)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、エクソソーム研究は大きく拡大し、その存在と意義に関して知見が集まりつつある。特に、エクソソーム中に含まれるmicroRNAの役割とその病態(特に癌)への関与は注目を集めている。しかし、神経性や腫瘍性疾患など、エクソソームの病態での役割の解析が進んでいるものは限られており、病態生理における全体像の理解は不十分と考えられる。我々は、エクソソームの炎症性疾患における役割を明らかにすることを目的とし、これまでに培養マクロファージのエクソソームにおいてiPLA2、COX-2、PGE合成酵素の存在を確認している。 本年度は、関節リウマチモデル動物におけるエクソソームの存在確認及びその性質の解析を行った。関節リウマチを発症するSKGマウスおよびコントロールとなるBalb/cマウスにおいて、血液を経時的に採取し、エクソソームを単離し低分子RNA画分を生成した。これをサンプルとし、microRNAの発現量の差異をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。その結果、数十の解析対象となるmiRNAが候補として絞り込まれた。これらのmiRNAに関して、マウスの系統差および関節炎症状の進行にともなう変動をリアルタイムPCRにて詳細に解析した。その結果、病態と相関する幾つかの候補が絞り込まれてきた。これらの候補の標的検索を行った結果、炎症関連メディエーターの産生に関わる酵素や滑膜細胞の分化及び増殖に関連するものが認められた。今後、これらのmiRNAが病態の進行とどのように関連するのかを検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SKGマウスにおける関節リウマチ症状を安定的に惹起する条件が確立できている。血中エクソソームの単離、microRNAの抽出と定量に関して確かなプロトコールを整備できている。マイクロアレイによる網羅的解析から、有力な候補見いだしている。以上のこのから、研究は概ね順調に進展していると判断出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
特定のmicroRNAに関して、病態との関係を明らかにする。そのmicroRNAが標的とする遺伝子が、関節リウマチにどのように関わっているのかを解明する。これらのために、モデルマウスに加えて、培養滑膜細胞を用いた実験系の導入を検討する。更に、生体或いは培養細胞から単離したエクソソームを蛍光標識し、生体(実験動物)に局所投与した場合の生体内動態をライブイメージングで解析する。また、その動態に対して、局所炎症等が与える影響や抗炎症薬による変化も観察する。これらの解析から、関節リウマチモデル(SKGマウス)における病状や抗炎症薬等の治療による治癒効果をスコア化し、それに対するエクソソーム中のプロスタグランジン関連酵素群の量的及び質的変化を比較検討し、エクソソームのバイオマーカーとしての可能性を考察する。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表する予定であった学会が他の教務との関連で実施できなかった。このため、当初に予定していた旅費相当額が次年度使用額として生じた。翌年度に行う予定の成果報告に関わる支出として使用する予定である。
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