2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic analyses of cell-fate determination and cell specification at the molecular level
Project/Area Number |
17K19407
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
黒田 玲子 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 教授 (90186552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 真典 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (60599918)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 発生生物学 / 発生分化 / 一細胞質量分析 / 顕微ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多細胞生物の初期発生における細胞運命決定と分化プロセスを解明するために、生きた状態の胚を用いて網羅的分子探索と分子ダイナミクスの追跡を可能にする手法の開拓を目的とした。具体的には、巻貝胚をモデルに螺旋卵割胚の4細胞期で定義されるA,B,C,D割球の特異性について、最先端の質量分析技術と分光学的解析法を用いて研究を行った。4細胞期と8細胞期の個々の4つの大割球から微量抽出した細胞質を一細胞質量分析法で計測し、得られた多数の分子スペクトルをPCA解析した結果、それぞれのステージでB or D割球とA or C割球の間に特異的な代謝環境が存在していることを始めて見出した。さらに、4細胞期と8細胞期の分子ピークの比較では、それぞれの割球群で異なる位置にクラスターが形成されたことから、発生の進行に伴う細胞内代謝環境の変化を捉えることができたと考えている。また、各割球系譜で共通の特異的代謝産物も見出されたことから、4細胞期の段階ですでにB or D割球とA or C割球で異なる分化を誘導する代謝経路が機能している可能性が示唆された。別のアプローチでは、顕微ラマン散乱分光顕微鏡を用い、同じく生きたままの胚で割球単位の特異性を非破壊的に計測することを試みた。ただし、この巻貝胚ではβ-カロテンのラマン散乱光が非常に強く、他の分子種由来の微弱なラマン散乱スペクトルの検出を妨げるという問題点に直面した。飼育条件を検討し、β-カロテンを含まないエサで長期間飼育を試みたが、生合成由来のものが多いためか、大幅な改善は見られなかった。今後、レーザー光の波長を変えるなど測定条件の検討を重ねたいと思っている。生きたままの胚を用いた初期発生の研究が与える細胞運命決定と分化プロセスに関する情報は大変貴重であり、両手法の更なる開拓が期待される。
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