2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト培養細胞を用いた網羅的スクリーニングによる細胞脱落を司る遺伝子の同定
Project/Area Number |
17K19409
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
川根 公樹 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (60362589)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞脱落 / 上皮 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞は組織から脱落して一生を終える。脱落は、隣接細胞との相互、協調作用によって行われる “細胞社会における細胞死” であり、細胞自律的な死と異なって分子機構の解明は遅れている。加えて重要なのが、脱落過程での上皮バリア維持機構である。細胞が脱落するには脱落細胞と隣接細胞間の細胞接着が消失する必要があるが、接着の消失はバリアの破綻の恐れを孕む。これを防ぐための洗練された機構が想定されるが詳細は不明である。以上の背景のもと本研究は、ヒト上皮細胞株を用いて遺伝子スクリーニングを行い、細胞脱落の各過程及び、その際に上皮のバリア機能を維持する機構を司る遺伝子を同定することを目的とする。 昨年度までに(1)脱落の各過程を司る遺伝子のスクリーニング、(2)細胞が脱落する際に上皮バリアの維持を司る遺伝子のスクリーニングについて実験系の最適化を行った。本年度はそれぞれにおいてスクリーニングの実施を試みたが、使用するKYSE30細胞における細胞脱落に、細胞が死んでから脱落がおこる死細胞脱落と細胞が生きたまま脱落する生細胞脱落が混在していることを示す実験結果が得られ、実験系の再考が必要な事態が生じた。KYSE30細胞をサブクローン化し、一方の脱落のみおこる細胞クローンを得る、細胞死の刺激を加えて死細胞脱落を誘導する、他の細胞株を試す、などの解決法を試行中である。並行して、スクリーニング実施時に候補遺伝子をある程度絞ってスクリーニングを行うため、細胞脱落がおきる細胞や組織とおきない細胞や組織との遺伝子発現を比較するRNAseq解析を実施してデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況の欄で記載したように、実験系の再考が必要な事態が生じ、スクリーニングの開始が遅れているため、『やや遅れている』と自己評価した。一方で、並行してスクリーニング対象遺伝子をある程度絞るための遺伝子発現解析を実施したり、他の解析において細胞脱落に関与する遺伝子の候補をいくつか見出してきているため、これを問題点を改善した実験系を用いて検証することで研究目的を達成することも可能であるため、次年度以降で研究を加速したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、直面している解析系の細胞脱落様式に死細胞脱落と生細胞脱落が混在している可能性を解決するため、KYSE30細胞をサブクローン化し、一方の脱落のみおこる細胞クローンを得る、細胞死の刺激を加えて死細胞脱落を誘導する、他の細胞株を試す、などの問題点を解決する試みを行って解析系を再確立した後にスクリーニングを開始する。その際、並行して進めている解析などで絞り込んだ候補遺伝子を優先的にスクリーニングする。また、スクリーニングによって同定した遺伝子の細胞脱落における働きを詳細に調べるためのテトラサイクリン誘導発現系を樹立する。スクリーニングで陽性となった遺伝子について、テトラサイクリン誘導発現系を用いて該当遺伝子の強制発現、RNAiの双方の実験を行い、表現型を示すかを確認する。加えて脱落細胞側、隣接細胞側のどちらで機能するかを明らかにするため、同定遺伝子を過剰発現する細胞 (あるいはノックダウン細胞)を蛍光標識し、正常細胞を混在させて播種した状態で表現型を解析する。さらに同定遺伝子の変異動物の解析、ヒト疾患との関連解析などへ研究を展開する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究において、培養試薬等の物品 (消耗品)、抗体等に、他の研究課題と共通で使用するものがあり、それらの一部を他の研究資金で購入できた。よって来年度の研究計画をより一層効率的に推進する目的で、上記の額について、本年度よりも次年度に使用することが望ましいと考えた。次年度は、培養細胞を用いたスクリーニングの実施と、スクリーニングで陽性となった遺伝子が細胞脱落に関与するかどうかを様々なアッセイ系を用いて検証する。この過程には種々の消耗品(培養試薬:血清など)に加え、マンパワーが必須であり、研究補助員を雇用して効率よく研究を遂行することを計画する。加えて、共同研究先(東京)で一部の実験を行う可能性があり、出張のための旅費が必要となる。 繰越額をこれらにあてることで 次年度の研究がより迅速に進展することが期待出来る。
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Research Products
(4 results)