2018 Fiscal Year Research-status Report
シングルセルトランスクリプトーム解析による温度記憶の解析
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17K19410
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 教授 (00402412)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 線虫 / C. elegans / 温度応答 / 温度受容ニューロン / 温度メモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶と学習の分子生理学メカニズムの基盤の解明は現代の生物学における大きな研究課題である。線虫Caenorhabditis. elegansにおいて、温度の記憶を行う頭部のASJ温度受容ニューロンがこれまでの解析から見つかってきた(Ohta et al., Nature commun, 2014)。そこでこのASJニューロンを実験系としてもちいて、このASJニューロンが示す1細胞レベルでの温度のメモリーを制御する分子機構を明らかにすることを目指す。そのための解析手法として、1細胞レベルでの遺伝子発現変動を検出し、温度記憶の制御を司るプロファイルを作成した。さらに、単一細胞レベルでの遺伝子発現変動リストをもとに、遺伝子の機能が低下した個体や機能が欠損した変異体の単離をおこない、それらの個体における温度馴化への関与を調べている。温度馴化に異常を示した 個体や変異体に関しては、その温度適応記憶の表現型に加えて、神経活動のカルシウムイメージングから記憶への関与を解析している。個体レベルの温度馴化とASJ温度受容ニューロンレベルでの温度記憶の表現型が顕著であった個体や変異体に関しては、実際にASJニューロンのみでそれらの表現型が制御されているかを調べるために、特定のニューロンで責任遺伝子を発現させ、変異体などの表現型異常が回復するかを調べ、責任遺伝子の細胞自律性を検証している。本研究から個体の温度記憶に関わる新規の遺伝子やその調節機構が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶の情報処理を1細胞レベルで非常にシンプルに捉えることができれば、その理解は飛躍的に進展すると考えられる。本研究では、近年同定した記憶を行う単一の感覚神経細胞であるASJ感覚ニューロンを解析モデルとして、記憶の多面的なイベントを定量化し、基本原理の解明を目指している。本年度は、単一ニューロンの温度応答遺伝子発現のプロファイルを使い、それらの遺伝子リストをもとに、遺伝子機能低下や機能欠損個体を単離し、その温度適応記憶の表現型と神経活動のCa2+イメージングから記憶への関与を解析したことから、当初の計画通りと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は前年度に引き続き、作成した単一のニューロンの記憶に関わる遺伝子発現のプロファイルを指標として、それらの遺伝子リストから遺伝子機能低下や機能欠損個体の単離し、その温度適応記憶の表現型と神経活動のCa2+イメージングから記憶への関与を解析する。また、原因遺伝子の種類によっては、温度記憶ニューロン内の温度記憶を人工的に操作することで、温度記憶の新規の生理的性質を捉える。そのためのツールとして、シナプス伝達を人工的に活性化する分子や、光駆動性チャネルを利用する。
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Research Products
(23 results)