2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19417
|
Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
志村 まり 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, 室長 (90226267)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 糖質可視化 / 細胞内イメージング / 一原子ラベル / シンクロトロン放射光 / 脂質 / 高分解像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はグルコースBrラベル体の細胞内可視化までを実施した。 1)グルコースBrラベル体の合成(北大鈴木):グルコースC-2の水酸基がBrに置き変わったBrDGを合成した。 2)BrDGの細胞代謝(久留米大豊田):培養液に添加2時間後の細胞で、ph酸性化率(ECAR)および酸素消費量(OCR)をSeahorse analyzerで測定した。グルコースC-2の水酸基がFに置き変わったFDGや水酸基が欠失した2DGは代謝抑制するため、コントロールに使用した。それぞれ2DG>FDG>BrDGの順に抑制効果を認めた。さらに、DMEM培養液(グルコース不含)に置き換え、血清中グルコースが存在する環境下、BrDG 5mMのGAPDHへの抑制効果はFDGより約5倍弱かった。細胞内BrDG取り込み量が少ないことが危惧される一方で、FDGよりもBrDGの代謝が許容された可能性が考えられた。 3)BrDGの可視化(志村、阪大松山):高輝度放射光を用いたSXFMにより、BrDG 5.6 mM,15min処置後の細胞核内に強いシグナルが、リン(P)が高濃度に認められる領域(核小体)と共局在した。危惧されたBrDGは、細胞に取り込まれていることが示唆された。 4) ICP-MS解析 (志村):ICP-MSによる細胞内Br定量より、パラホルムアルデヒト固定前後で、約90%のBrの喪失が明らかとなった。 以上より、本研究でBrDGの可視化に成功した。これまで不明であったグルコース細胞内局在が見え始めた。解糖系抑制がFDGより少ない理由は不明だが、今後のMS解析の詳細で明らかになる。BrDGの細胞核局在は、グルコースが核機能に働く報告と合致していることから、今後適正な代謝阻害剤を付与し、核局在への影響を検討する。また、瞬間凍結乾燥法を確立し、固定による喪失画分の局在も明らかにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、糖質グルコースの細胞内可視化に成功した。観察されたBrシグナルが糖質代謝産物であることを検証することが最も肝要ではある。しかし、細胞内糖質が初めて可視化された可能性は低くないと考える。 BrDGの細胞核局在は、グルコースが核機能に働く報告と合致しているからである。また、これまでの細胞内の微量元素を観察した経験の中で、BrDGは大変特異な局在であり再現性もある。固定処置後のBr局在は、BrDGがクロマチンなどの蛋白質や核酸と結合した結果比較的不溶性となり、固定処置に抵抗性となった画分と推測している。一方、BrDGから解離したBrを観察している危惧はあるが、現時点では否定的である。臭素塩を細胞に取り込ませた場合には、細胞質に集積する傾向を確認、また、Brラベル脂肪酸の場合のBr解離は完全には否定できないが、細胞イメージングや細胞機能解析スペックでは問題にならない程度であったからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は、糖質グルコースの細胞内可視化を行い、画像を得ている。今後は、観察されたBrシグナルが、糖質代謝産物であることを明らかにする必要がある。理想的には、糖質オミックス専門家の支持を仰ぎ、代謝産物のMS解析を実施したい。専門家の協力が得られない場合は、適正な阻害剤投与などの実験を行い、イメージングによるBr局在変化を観察し、局在と細胞機能の対応を得る。また、瞬間凍結乾燥装置を改良し、凍結乾燥法を確立し、パラホルムアルデヒト固定による喪失画分の局在性を明らかにする。並行して展開している脂肪酸イメージングは、飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への可視化まで可能となった。糖質と脂質代謝は深い関わりがあることより、同時に細胞動態を観察することを目標とする。そのため、脂質にはBrではなくSeラベル体を作成した。
|
Research Products
(11 results)