2018 Fiscal Year Research-status Report
Identification of a novel longevity factor by analyzing the long-lived fly populations "DR-evolved flies"
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17K19419
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
赤木 一考 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 組織恒常性研究プロジェクトチーム, プロジェクトリーダー (30794424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TRINDADE LUCAS 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 組織恒常性研究プロジェクトチーム, 流動研究員 (80607466)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 食餌制限 / 老化 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
食餌制限による寿命延伸効果は、多くの生物種で観察されているが、その詳しいメカニズムは未だに不明である。我々は、食餌制限下で100世代以上継代飼育した長寿系統「DR-evolved flies」を作出しており、その長寿形質をもたらすメカニズムの解明に取り組んでいる。前年度までに行ったトランスクリプトーム解析によって、「DR-evolved flies」において発現量が有意に変動している遺伝子を複数得ており、現在解析を進めている。本年度は、観察された長寿形質が腸内細菌叢に由来する可能性について検討した。そのために、「DR-evolved flies」に抗生物質を給餌し、腸内細菌を除いた状態における寿命を観察した。その結果、同様に抗生物質を給餌したコントロール系統と比較して、「DR-evolved flies」では依然として寿命の延伸が観察され、長寿形質は失われなかった。したがって、「DR-evolved flies」の長寿形質は腸内細菌叢非依存的であることが示唆された。また、「DR-evolved flies」の腸管恒常性について調べた結果、加齢に伴う腸幹細胞の異常増殖が抑えられていることがわかった。したがって、腸管がこの長寿形質において重要な役割を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ショウジョウバエの腸管では、加齢に伴い腸幹細胞が異常に増殖し、腸恒常性破綻およびdysplasiaを引き起こすことが知られており、寿命と密接に関係している。そのため、腸幹細胞増殖レベルは、老化マーカーの一つと考えられている。そこで、「DR-evolved flies」の腸恒常性を調べるため、リン酸化ヒストンH3抗体を用いて腸幹細胞増殖レベルを免疫組織化学的手法を用いて観察した。その結果、「DR-evolved flies」では加齢に伴う腸幹細胞の増殖がほとんど見られず、腸恒常性が維持されていることが明らかになった。さらに、長寿形質に腸内細菌叢が関与しているかどうかを調べるため、抗生物質を給餌し寿命への影響を観察した。その結果、腸内細菌を除いた場合でも長寿形質は失われなかった。したがって、「DR-evolved flies」の長寿形質は腸内細菌叢非依存的であることが示唆された。本研究課題では、「DR-evolved flies」の腸内細菌叢に注目して研究を行う計画であったが、この結果から、研究計画を多少変更しなければならなくなったため、その分の遅れが生じている。一方、前年度までに絞り込んだ候補遺伝子については、引き続きそれらを全身でノックダウンし、寿命への影響を調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、メタゲノム解析を行い「DR-evolved flies」の腸内細菌叢について、詳細に明らかにしていく予定であったが、本年度の結果から、観察された長寿形質は腸内細菌叢非依存的であることが示唆された。一方で、腸幹細胞増殖レベルを観察した実験から、「DR-evolved flies」では加齢しても腸恒常性が維持されていることが明らかになったため、腸管が「DR-evolved flies」の長寿形質に重要な役割を持つと考えられる。そこで、トランスクリプトーム解析から絞り込まれた候補遺伝子で、全身でのノックダウンで寿命に影響が見られた遺伝子については、腸管特異的なノックダウンを優先的に行い、寿命への影響を観察する。さらに、その時の腸幹細胞増殖レベルについても観察を行い、「DR-evolved flies」が腸恒常性を維持するメカニズムについての解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、当初計画していたメタゲノム解析を行わなかったため、そのための予算の一部を研究に必要な試薬等の購入費として使用した。次年度は、寿命検定に必要なショウジョウバエ飼育用バイアルやエサ等の消耗品費の他、学会発表のための旅費として使用する計画である。
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