2018 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類における体毛の針化を題材とした新規形質獲得の分子メカニズム解明
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17K19422
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70432010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 正隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10300716)
重谷 安代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70431773)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ハリネズミ / 平行進化 / 針 / 体毛 / ケラチン / 進化 / 新規形質獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は体毛の針化に関わる平行進化の分子メカニズムを明らかにすることである。特に、針が複数の体毛が融合したものなのか、もしくは1本の体毛が肥大化したものなのかを検証することがもっとも重要な検証課題である。これまでに我々は、アフリカヨツユビハリネズミ(Atelerix albiventris)の針と体毛の組織解剖学的な観察を目的として、生後1ヶ月程度と1日の個体について解剖をおこなった。解剖後の個体に関しては、背側に生えている成熟針と成長途中の針(生え始めている段階)、および腹側に生えている体毛をそれぞれ皮膚ごと単離してブアン固定し、パラフィン切片を作成した。それらについてはヘマトキシリン・エオジン染色をおこない顕微鏡観察をおこなった。その結果、生後1ヶ月と1日の個体ともに、針の基部では単一の毛乳頭細胞が存在し、それらが針の上部に移るに従い規則的なヒダ構造を形成毛皮質と毛髄質に分化していくことが分かった。針の基部の毛乳頭細胞については単一であり、その他の基本的な構造は体毛と違いは観察されないことから、針は1本の体毛が肥大化し、その内部に規則的なヒダ構造が形成されたものであることが、2つの異なるステージの個体の組織観察により明らかとなった。同時に、生後1ヶ月と1日の個体については、それぞれの組織からRNAを抽出しRNAseqをおこなうことで、それぞれの組織における遺伝子発現を網羅的に比較した。その結果、針領域には多くのケラチンタンパク質遺伝子およびケラチン関連タンパク質遺伝子が発現しており、これが針の硬質化に関わっているのではないかと予想した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの針発生に関する仮説としてもっとも有力であったのが、中心部の太い体毛が周りの細い体毛を融合しながら1つの針を形成していくものであったが、本研究によって、その仮説とはまったく逆で、太い原基の内部に規則的なヒダ構造が形成されていくことで、あたかも複数の体毛が融合しているように見えているということが明らかとなり、まず組織解剖学的な目的は達成できたため、計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はRNAseqの結果をより詳細に解析することで、体毛と針の間で材料となるケラチンの種類にどのような差があるのかを明らかにしていく。これは針の硬質性をもたらす材料上の原因を探ることができると期待している。また、針内部にできる特徴的なヒダ構造がどのような遺伝子発現によって生じるのかを、例えばパターニングに関わる代表的なタンパク質(BMP, Shh)の抗体染色をおこなって明らかにしたいと考えている。これにより針の硬質性をもらたす構造上の原因を探ることができると期待している。
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Causes of Carryover |
RNAseq解析のための新生仔の個体が必要であったが、そのサンプルの準備が間に合わなかったため次年度に使用することとした。すでにRNAサンプルが準備できたので、本年度中にRNAseqをおこなう予定である。
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Research Products
(1 results)