2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19423
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90392117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 久美子 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 准教授 (50622916)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 共生 / 種分化 / 腸内細菌群集 / メタゲノム / 木質分解 / 昆虫 / 原生生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、シロアリ腸内共生原生生物を題材として、原核生物の細胞共生によって原生生物の同所的種分化が生じたという研究代表者・本郷の仮説を検証するものである。ただし、同原生生物群は培養不能であるため、培養を介さずに、基本的には1細胞レベルでの解析を必要とする技術上も挑戦的な課題である。 H29年度は、ムカシシロアリ腸内原生生物の1種、Mixotricha paradoxaが、メタン生成アーキア(メタン菌)の細胞内共生の有無によって実際には2種に分類可能であることの証明を主題とした。そのため、同原生生物種を1細胞ずつマイクロマニピュレーションで物理的に単離し、メタン菌の有無判定と形態学的データ取得を行うとともに、全ゲノム増幅法によってDNAを調製した。 DNA試料から分類マーカーである18S rRNA遺伝子配列をPCR増幅して分子系統解析を行い、形態データと比較したところ、メタン菌保有Mixotricha細胞群と非保有細胞群は系統学的に明確に分離し、平均1.5%の配列差異があった。核の位置や細胞のサイズ、形状など、形態学的にも識別可能であった。これは1933年の原記載論文以来、1属1種とされてきた定説を覆す発見である。 これら2種に分離されたMixotrichaについて、宿主原生生物の機能の差異の評価を目的とする、1細胞転写産物解析の条件検討を行った。少なくとも市販の1細胞用キットを使用した通常のプロトコルでは高い品質のRNAを調製できない可能性を見出しており、条件最適化が必要である。 さらに、共生細菌も包含した「super-organism」としてのMixotricha2種の顕著な違いであるメタン菌に着目し、そのゲノム配列取得を目指した。原生生物1細胞試料を用いてメタゲノム解析を行った結果、同メタン菌の高完成度のドラフトゲノム再構築に成功した。現在、詳細な情報解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、計画通りに研究が進んでいる。1細胞からの転写産物解析が困難であることは想定内であり、その最適化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、共生メタン菌ゲノムの情報解析による機能推定を進めるとともに、宿主原生生物の2種間での機能の差異を、1細胞転写産物解析で評価する。出発RNA量が微小であり、非モデル生物の同原生生物では失敗する可能性もあるが、上手くいかない場合、複数細胞を回収して比較する。1細胞ごとの方が情報量は多いが、複数細胞同士の比較でも、ある程度の評価は可能なはずである。さらに、1細胞(あるいは複数細胞の)メタボローム解析を試みていく。 また、当初計画には含めていなかったが、別の原生生物系統群(oxymonads)でも、同所的種分化の研究モデルとなり得るケースを見出したので、その基礎的研究も行う。
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Causes of Carryover |
共生菌のゲノム配列取得がが予想以上に順調に進んだため、その費用が少なく済み、また同共生菌のゲノム情報解析を前倒しで進めたために、並行してすすめている転写産物解析の試行回数は少なめに抑えた。H30年度は、この次年度使用額と合わせて、転写産物解析を精力的に行う予定である。
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Research Products
(3 results)