2018 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類の転移因子がもたらした形態形成遺伝子の発現制御システムの探索
Project/Area Number |
17K19424
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10450727)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 発現制御 / 転移因子 / 乳腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、哺乳類の転移因子が発生学的に重要な転写活性化因子の結合サイトを拡散増幅することでその形態進化に関わるシス制御配列を増大させたことを明らかにすることが目的である。平成30年度は転写活性化因子が結合する転移因子配列についてエンハンサー機能解析をおこなってきた。具体的にはこれまでに蓄積したChIP-seqデータ解析から得られた転写活性化因子が結合する転移因子情報から乳腺形成に寄与することが知られる遺伝子の近傍に位置するものを選別し、乳腺由来培養細胞におけるルシフェラーゼを用いたエンハンサー機能解析をおこなった。この過程で多くの転移因子についてタンパク質結合サイトのみが進化的に保存されていることを明らかにし、転移因子配列が培養細胞のみならず正常な組織細胞でも機能している可能性を示した。さらに本年度はマウスの乳腺組織を用いたChIP-seqデータ解析をおこない、数種類の転移因子についてはヒトと同様に結合サイトが有意に高密度であることを明らかにした。一方でマウス特有の転移因子が転写活性化因子の結合サイトを拡散増幅させたことも発見した。以上の結果から、一部の転移因子は霊長類と齧歯類それぞれの系統で転写活性化因子の結合サイトの同時多発的創出に寄与したことが明らかになった。このことは転移因子が哺乳類の共通性と系統特異性の両面でシス調節配列の拡大に多大な影響を及ぼしたことを意味しており、ゲノム進化の過程で転移因子がもたらした機能の重要性が当初の予想以上に高いことを示す結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳腺の発生に関わる転写活性化因子については、当初は予定していなかったマウスの乳腺組織のChIP-seqデータ解析をおこない、哺乳類共通の転移因子のみならず系統特異的な転移因子も機能領域の源泉配列を拡散増幅させてきたという思いがけない結果を明らかにした。この点については当初の想定以上に大きく進展したと考えている。一方でその他の組織についても様々な転写活性化因子の結合サイトと転移因子配列との関連性について解析を進めており、全体的な進捗としては概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
乳腺形成に関わる転写活性化因子の解析結果を踏まえ、それ以外の細胞におけるChIP-seqデータ解析も順次進めており、今後もそれを継続する。特に異なる組織間において同一種類の転移因子が異なるタンパク質の結合サイトの増幅に寄与した事例があるか否かを検証する。また平成30年度におこなったマウス乳腺組織のChIP-seqデータ解析のような種間比較は、レトロポゾンによる機能配列のシード配列の拡散増幅モデルが異なる系統群や組織でも適用可能か否かを検証する上で極めて重要である。そのために今後はヒトとマウスの神経細胞など様々な種類の細胞のChIP-seqデータ解析と乳腺で得られた結果との共通性を探り、転移因子による結合サイトの拡散増幅の一般化モデルの構築を目標とする。
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Causes of Carryover |
今年度はマウス組織のChIP-seqデータ解析から大きな発見があり、培養細胞を用いた実験の一部はそのデータ解析によるアプローチに切り替えることができたため未使用額が発生した。次年度はこうした種間比較解析から発見されたエンハンサー候補配列の活性測定をおこなうため、未使用額をヒト・マウス両方の培養細胞を用いた比較機能解析に重点的に使用するのに加え、論文等の成果発表も重視して使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)