2019 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類の転移因子がもたらした形態形成遺伝子の発現制御システムの探索
Project/Area Number |
17K19424
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10450727)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 発現制御 / 転移因子 / 乳腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳類の進化の過程で転写活性化因子の結合サイトを転移因子が拡散増幅したことで哺乳類の形態進化に寄与するエンハンサーを増大させたことを明らかにすることを目的とする。令和元年度はまず前年度までにおこなった乳腺形成に関わる転移因子由来のエンハンサーについて二つの知見を得た。一つは4種類の転写活性化因子の結合サイトを持つ転移因子領域の近傍には乳腺形成もしくはエストロゲン応答に関与する遺伝子が有意に多く存在していたことである。二点目として、特に転写活性化因子が結合するレトロトランスポゾン配列における進化的保存性を数値化することで、正常な乳腺細胞においてエンハンサー機能を有するかなりの数の転移因子が存在する可能性が高いことを示した。本年度はこれまで得られたデータをまとめ、最終的に論文を発表するに至った(Nishihara, Nuc. Acids Res. 2019)。さらに本研究では幹細胞からの分化過程における転移因子由来エンハンサーの活性化、および分化誘導における転写活性化因子の結合分布の解析を開始している。これにより哺乳類特有の乳腺のみならず脊椎動物の間で共通して保有される細胞の分化においても、転移因子による哺乳類特異的な発現制御システムの改変が起きてきたことを明らかにすることが可能となる。この興味深い知見をより詳細に追究することで哺乳類進化における転移因子がもたらしたゲノム機能の創出とその多様化要因の一般則を明らかにすることができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、乳腺形成過程では転移因子によるシス調節配列の拡大が真獣類の共通性および真猿類とネズミ科といった系統特異性の両面において大きな影響を及ぼしたことを明らかにした。本年度はその研究結果を論文として発表しており、さらに他の細胞分化における同様の興味深い現象についても解析を開始していることから、順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの乳腺由来細胞を用いた転移因子由来エンハンサー探索の解析手法を応用し、幹細胞の分化過程における主要な転写活性化因子の結合分布と転移因子由来の保存領域との比較解析を開始している。これに関して予想外に興味深い結果が得られておりその実験的検証を含め詳細に追究する必要が出てきた。今後はその細胞分化過程においてエンハンサー機能を示す転移因子の分類、近傍遺伝子群の解析、さらにヒトとマウスの機能比較解析をおこない、異なる組織間における転移因子による結合サイトの拡散増幅の一般化モデルを構築し、本研究課題を総括する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた幹細胞からの分化の際にシス調節配列として活性化する転移因子領域に関して解析を進めていたところ予想外の発見があり、その詳細な検証のために培養細胞の実験も含めたさらなる研究の必要性が生じた。未使用額はそのデータ収集および成果発表のために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)