2018 Fiscal Year Annual Research Report
Toward understanding of regulatory mechanism of body growth and metabolism based on optimal control theory
Project/Area Number |
17K19433
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西村 隆史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (90568099)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 進化 / 生態学 / 生理学 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の体の大きさは、遺伝情報だけで完全に定められているわけではなく、発育過程に置かれた環境の栄養や温度にも依存して変化する。本研究の最終的な目標は、生物種特有の「環境依存的に起こる成長と代謝の変化」という現象を、時空間スケールの異なる生態学の立場から捉え直し、より原理的かつ数理科学的な理解に繋げることにある。本研究を推進するにあたり、キイロショウジョウバエをモデル生物として研究を実施した。 飢餓に対する一般的な生理応答として、貯蔵エネルギーを消費することで延命する。一方で、幼虫は次に来る発育段階としての蛹期(計画的な飢餓)に向けて栄養を貯蔵する必要がある。幼虫の重量がCritical Weight(CW)と呼ばれる閾値に達することで、蛹期(成熟期)への進行が不可逆的に開始する。これら二つの相反する要求がある時に、どのような飢餓応答が最適なのか? この問いに答えるため、新たな数理モデルを構築した。最適制御理論に基づく数理解析の結果、確率的に発生する飢餓に対する生理応答は、貯蔵栄養の消費から保持へ代謝シフトすることが最適であることが分かった。実験的に検証した結果、脂肪体に貯蔵されている多糖グリコーゲンと中性脂肪、さらに血糖トレハロースが、飢餓状態にも関わらず一定量を維持し続けることを見いだした。一方、飢餓時に起こるオートファジーは、閾値の前後で変わりなく誘導された。さらに、これら貯蔵栄養の飢餓応答の代謝変化に、ステロイドホルモンが関わることを明らかにした。また、閾値後の飢餓条件下では、蛹期に向けて個体レベルで代謝活動を抑えていることを見いだした。 一連の研究を通して、生活史戦略としての代謝調節機構が明らかになり、生命の設計原理の一端が解明された。本研究で得られた成果をまとめて、現在論文投稿中である。
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