2017 Fiscal Year Research-status Report
神経活動の動態観察と光操作に基づく、記憶想起を担う回路基盤の解明
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17K19445
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野本 真順 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (20636253)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 記憶想起 / カルシウムイメージング / CA3 / CA1 / セルアンサンブル / 記憶固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶を元に食物や天敵を察知し、初動に移る速さは生存競争において重要である。従来の記憶研究は単純に記憶が想起できたかのみを研究対象としており、記憶の想起開始から終了までに回路レベルでどのような活動制御が生じて記憶想起が実現しているか明らかにした研究はない。本申請では、海馬CA3-CA1経路が想起直後の早い想起を担う回路であるという仮説を立て、想起時のCA1領域の上流である嗅内皮質(EC)およびCA3領域の情報伝播を可視化し、さらに、光操作により想起フェーズにおける各脳領域の機能を検証し、記憶の想起を担う回路基盤の解明を目指す。 光操作を用いた想起におけるCA3特異的不活性化の影響の解析を解析した。CA3特異的に光依存性抑制性オプシンArchTを発現させ、光恐怖条件付け課題、および音恐怖条件付け課題の想起時に、CA3の活性を抑制したところ、両課題において、光照射群は非光照射群に比べて有意に低い恐怖反応を示し、CA3の活性が音や光で条件付けされた恐怖記憶の想起に必要であることが示唆された。 続いて、カルシウムイメージングにより、記憶想起時のCA3反回回路の役割を解析した。CA3神経可塑性の障害を示すCA3特異的NMDA受容体欠損マウスは、コントロール群に比べて、学習誘導性の高頻度活動が顕著に低下していることが分かった。今後は、得られたデータを数理解析し、記憶想起に必要なCA3特有の細胞活動パターンとその出現タイミングを解析し、コントロール群と変異マウス群の間で差異が認められるか解析する。 現在、カルシウムイメージングと海馬局所脳波の同時計測系を開発し、解析を進めている。 さらに、嗅内皮質の経路の記憶想起における役割の解析も同様に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、記憶想起に重要なCA3およびCA1におけるセルアンサンブルと活動パターンの抽出を目的として、カルシウムイメージングを行った。想起に重要なCA1およびCA3領域のセルアンサンブル表現を検討するため、脳内でカルシウムセンサータンパク質G-CaMPを発現するThy1-G-CaMPマウスのCA3およびCA1領域に超小型内視顕微鏡nVistaを設置し、記憶想起中の各脳領域のセルアンサンブル動態を解析した。しかしながら、Thy1-G-CaMPマウスの海馬CA3におけるG-CaMPの発現量は、イメージング遂行に十分でないことが分かったため、海馬におけるG-CaMP発現方法をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに切り替えて、G-CaMPを発現するAAVをCA3およびCA1領域に導入し、イメージングを行った。その結果、CA3神経可塑性の障害を示すCA3特異的NMDA受容体欠損マウスは、コントロール群に比べて、学習誘導性の高頻度活動が顕著に低下していることが分かった。 また、記憶想起におけるCA3-CA1経路の役割を解析するため、海馬CA3領域特異的にCreを発現するKA1-CreマウスのCA3領域にCre依存的に抑制型オプシンArchTを発現するAAV (CaMKII-DIO-ArchT-EYFP)を導入した。続いて、記憶想起中に光操作によってCA3の活動抑制を行い、記憶想起に与える影響を解析した。その結果、光恐怖条件付け課題、および音恐怖条件付け課題の想起時に、CA3の活性を抑制したところ、両課題において、光照射群は非光照射群に比べて有意に低い恐怖反応を示し、CA3の活性が音や光で条件付けされた恐怖記憶の想起に必要であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、イメージングによって得られたデータを数理解析し、記憶想起に必要なCA3特有の細胞活動パターンとその出現タイミングを解析し、コントロール群と変異マウス群の間で差異が認められるか解析する。 本申請の仮説では、海馬CA3-CA1経路が想起直後の早い想起を担う一方で、嗅内皮質(EC)-CA1経路が遅い想起を担うと予想していたものの、CA3光抑制によって想起フェーズ全体において記憶想起の障害が認められたことから、CA3の役割についてさらに深く解析する必要が出てきた。 現在、CA3神経可塑性の障害を示すCA3特異的NMDA受容体欠損マウスのCA3およびCA1のイメージングも行っており、これまでに報告されていないCA3とCA1の記憶想起における未知の役割が明らかになる可能性も出てきた。 数理解析の結果次第では、CA3-CA1領域間での連絡様式の役割にフォーカスしてCA3-CA1経路の想起における役割について深く解析する予定である。
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Causes of Carryover |
本申請は、3年間に渡り行われる事業であり、予定通り進んでいる。 次年度使用額(初年度分)が生じた理由については、研究スケジュールの都合で情報収集・研究発表のための平成29年度の国際学会に参加できなかったため、旅費を使用する機会がなかったたものの、代わりに本年度に国際学会に参加する。 また、物品費については、消耗品であるイメージング用レンズ(単価3万円)を工夫により、数回再利用可能な状態にして、当初よりも初年度に購入を予定していた数よりも購入数が少なくなったこと、合算使用したため残額が生じた。次年度使用額は、今年度予定している実験の物品費および旅費に充てる。
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