2017 Fiscal Year Research-status Report
うつ病の中核症状「アンヘドニア」におけるカレハ島仮説の検証
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17K19459
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相澤 秀紀 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (80391837)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | アンヘドニア / 腹側線条体 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
「楽しい」と感じなくなる無快楽症(アンヘドニア)はうつ病の診断基準に含まれるいわばうつ病のコア症状の1つである。この重要性にもかかわらず、その病態生理には不明な点が多い。これまでの機能画像研究によると腹側線条体(側坐核)はうつ病において一貫して血流低下が報告され、アンヘドニアの病態生理において中心的役割を果たすと考えられる。本研究では、このような腹側線条体における血流制御を担う血管拡張物質として一酸化窒素が関与すると仮定し、腹側線条体に近接して一酸化窒素を産生するカレハ島の機能を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、カレハ島の神経活動を遺伝子改変により操作可能とするマウスの作成とその最適化を行った。具体的には、カレハ島特異的にCre recombinaseを発現するTg(Drd3:Cre)系統マウスに対して、光遺伝学や化学遺伝学プローブを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを注入し、遺伝改変技術の最適化を行った。微量のウイルス液を内外側方向にわたる複数の腹側線条体に注入することにより広範に分布するカレハ島を標識することに成功している。一方、免疫組織化学による検討を行い、カレハ島に発現するアセチルコリン受容体やNADPH-diaphorase活性をもとにカレハ島を構成する細胞の分類を行った。さらに、透明化技術を用いて細胞核を全脳で標識し、カレハ島の3次元的構造の可視化を行い、腹側線条体を栄養する血管と密接して存在するカレハ島細胞の関係を解析する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、アンヘドニアのカレハ島仮説を検証するにあたり、カレハ島神経細胞の遺伝子改変技術を確立できたことは大きな進捗と考えられる。さらに、組織学的な検討によりカレハ島細胞の分類や3次元的な組織構築を明らかにする手がかりを得られたことにより、平成30年度における行動解析の神経解剖学的基盤が確立されたと考えられる。これらの事実より、現在までの進捗状況は概ね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により確立されたカレハ島神経細胞の遺伝子改変技術を用いて、今後はカレハ島領域の活動性上昇が一酸化窒素放出に与える影響を調べる。また、カレハ島の持続的活動性上昇を引き起こす化学遺伝学プローブを強制的に発現させるマウスを作成し、報酬嗜好性をショ糖嗜好性試験などを用いて検討する予定である。ただし、カレハ島が動物の生理活動や行動に与える影響はほとんど手付かずのままであるため、睡眠覚醒リズムや食行動、活動性の変化など多岐にわたる生理学的・行動学的検討を行う必要があると考えられる。
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Causes of Carryover |
動物飼育施設の空調不備により遺伝子改変動物の繁殖が遅れたため、動物飼育に関わる費用の一部を次年度に使用して計画を継続することとした。
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Research Products
(6 results)