2018 Fiscal Year Research-status Report
うつ病の中核症状「アンヘドニア」におけるカレハ島仮説の検証
Project/Area Number |
17K19459
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相澤 秀紀 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (80391837)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | カレハ島 / アンヘドニア / 線条体 |
Outline of Annual Research Achievements |
うつ病のコア症状であるアンヘドニアの病態生理には未だ不明な点が残されており、その神経機構の解明は治療法開発に不可欠である。これまでの機能画像研究によるとうつ病患者の腹側線条体の局所血流は報酬に対する異常反応を示すことが知られており、その血流障害が病態生理に関与する可能性が高い。この問題に取り組むため、本研究課題では腹側線条体及びその栄養血管に密着して存在するカレハ島の機能をマウスを用いて明らかする。 平成30年度は腹側線条体における脳局所血流の測定法を開発した。具体的には脳深部に存在する腹側線条体へ独自に開発した光ファイバープローブを設置し、レーザードップラー血流計と組み合わせて腹側線条体の局所血流を測定することに成功した。 また、腹側線条体の周囲で一酸化窒素合成酵素の豊富なカレハ島と支配血管との立体的相互関係を明らかにするため、透明化法の改良を行った。具体的には、Hypotonic shockによる核染色を腹側線条体組織のブロック標本に応用し、共焦点レーザー顕微鏡で記録した。個体ごとのカレハ島の分布を検討することが可能となり、個体差や性差、老化による影響を調べる手法を確立した。 さらに、マウスアンヘドニア様行動異常を調べる行動試験として、ショ糖嗜好性試験に加えて脳内自己刺激法を用いた定量的評価法を独自に開発した。具体的には、内側前脳束へ設置した刺激電極を介して段階的に脳刺激頻度を減少させ、嗜癖行動を誘発する刺激閾値を定量的に評価するデータ取得プログラム及び解析プログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、アンヘドニアのカレハ島仮説を検証するにあたり、マウスアンヘドニア様行動異常を評価する実験系を確立したことが大きな成果である。マウスのアンヘドニア様行動はショ糖嗜好性試験が頻繁に用いられるものの、同試験の再現性や安定性については議論が多く、より定量性の高い評価法が望まれている。これらの問題解決に当たる上で、独自の定量的評価法を確立できた意義は高く、大きな進捗と考えられる。また、カレハ島の活動操作を可能にする遺伝子改変系統の準備も整いつつある現状を考慮すると、現在までの進捗状況は概ね順調と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により確立された1)遺伝子改変による神経活動操作、2)アンヘドニア様行動異常の評価、3)腹側線条体における脳局所血流測定を集約して、本研究課題の仮説を検証する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった抗体試薬および電極材料の輸入に想定外の遅れが生じたため。充当予定であった当該予算を次年度へと繰り越して研究を進めることとしており、研究計画に支障はない。
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Research Products
(4 results)