2017 Fiscal Year Research-status Report
アルカロイド由来の新規有機不斉触媒と特定配列オリゴヌクレオチド認識分子の創製
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17K19474
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高山 廣光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (90171561)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | アルカロイド / 機能性分子 / 有機不斉触媒 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1「新規有機不斉触媒の開発と応用研究」を実施するためにロウバイ(蝋梅)の種子5kgをメタノール抽出し、得られたアルカロイド分画から結晶化操作で純粋な(+)―カリカンチンを22.95gに得た。このようにして得た(+)―カリカンチンを試薬として用い、環状βケトエステルの触媒的不斉αアミノ化反応を試みた。反応溶媒、反応温度、反応時間、触媒(カリカンチン)の量に関して様々な組み合わせを精査した結果、化学収率73%、不斉収率53%にて目的物を得る条件を見出すことができた。これによりカリカンチンが有機不斉触媒としての潜在性を持っていることを明らかにすることができた。 課題2「DNA内の特定配列オリゴヌクレオチドのワトソン―クリック塩基を特異的に認識する機能性分子の創製」のため、上記で抽出・分離したカリカンチンそのものが、チミン(T)あるいはアデニン(A)及びこれら核酸塩基のN-ベンジル誘導体と水素結合を形成する能力を有しているか否かをNMR実験にて検証した。具体的には、NMRの測定溶媒、基質濃度、カリカンチンと基質との混合比を変化させて、カリカンチンあるいは基質の窒素原子に結合しているプロトンのケミカルシフトの変化を観察したが、現在のところ、両者が水素結合を有している明確な証拠を得るに至っていない。そこで、カリカンチンのベンゼン環上に、水素結合に関与すると考えられるアミノ基を導入することとし、そのための予備実験(ダイレクトオルトリチオ化とそれに続く重水素化)を行った。その結果、所望の位置に重水素が導入されたことから、この知見を次年度の研究に生かすこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロウバイ(蝋梅)の種子をメタノール抽出し、得られたアルカロイド分画から結晶化操作で純粋な(+)―カリカンチンを多量に得た。これを用いて、まず、環状βケトエステルの触媒的不斉αアミノ化反応を試みた。現段階で、化学収率73%、不斉収率53%にて目的物を得ることができ、カリカンチンが有機不斉触媒としての潜在性を持っていることを明らかにすることができた。 カリカンチンとチミン(T)あるいはアデニン(A)及びこれら塩基のN-ベンジル誘導体が水素結合を形成するかを検証したが、現時点ではその証拠を得ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成29年度に得た成果を基にして、カリカンチンの分子修飾による新たな有機不斉触媒を設計・合成する。具体的には、カリカンチンの酸化によるアミジン型の強塩基触媒を合成し、新たな不斉反応への適用を検討する。 (2)カリカンチンのベンゼン環上2位にアミノ基を配した誘導体を調製する(1. N-Boc化、2.Direct Ortho-lithiation/I2化、3. Cu触媒によるアミノ化、4.脱保護基)。このようにして合成した化合物は、グアニン(G)あるいはシトシン(C)との水素結合が可能な分子として期待できるので、計算化学実験とウェット実験(主にNMR実験)からこれを検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた旅費、人件費が不要であった。また、更新を予定していた機器類が修理により使用できるようになったため、購入する必要がなくなった。 次年度の試薬類の購入、旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)