2018 Fiscal Year Research-status Report
Novel biological activity of food-derived oligonucleotides in central nervous systems
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17K19482
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 将夫 金沢大学, 薬学系, 教授 (30251440)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 核酸 / 神経新生 / 神経成熟 / 神経変性疾患 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸とアミノ酸を含むサケ白子抽出物を正常マウスに摂取させた時の記憶学習能への影響を調べた。サケ白子抽出物を2.5%含む餌を14日間与えたのち、新規物体認識試験(NORT)および空間認識試験(SRT)を行い、既知および新規物体に対する探索時間を調べたところ、普通餌(対照群)においては既知物体と新規物体の探索時間に差がなかった一方、サケ白子抽出物を与えた群では新規物体の探索時間が有意に延長したことから、サケ白子抽出物に記憶学習を高める成分が含まれることが示された。その成分を明らかとするため、サケ白子抽出物に含まれる核酸成分とアミノ酸成分のみをそれぞれ2.5%含む餌を同様に摂取させたところ、ともに新規物体の探索時間が有意に延長した。したがって、核酸とアミノ酸の両方が記憶学習能を高めることが示唆された。核酸による記憶学習メカニズムを解明する目的で、核酸塩基、ヌクレオシド、デオキシヌクレオシド、デオキシヌクレオチドの合計19種類の核酸化合物の脳海馬中濃度を測定したところ、cytosine, cytidine, deoxycytidineのサケ白子抽出物摂取後の濃度が普通餌と比べて高く、核酸による効果を裏付けた。さらに、海馬における遺伝子発現を検討したところ、摂取開始2日後には、神経幹細胞のマーカーNestin、グリア細胞のマーカーGFAP、ミクログリアのマーカーCD11b、オリゴデンドロサイトのマーカーMBP1, MBP2、未分化細胞のマーカーSOX2の発現が普通餌に比べて有意に高く、4日後には神経細胞のマーカーSynapsin1, βIII tubulinの発現が高い傾向にあった。また海馬由来初代培養神経幹細胞にサケ白子抽出物や核酸成分を添加すると細胞増殖が促進した。したがって、核酸は神経幹細胞の増殖や分化を促進する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に確立したマウス初代培養神経幹細胞での細胞増殖の評価系、ならびに種々の塩基、ヌクレオシド、デオキシヌクレオシド、デオキシヌクレオチドなど核酸化合物の一斉分析系を駆使し、核酸の生理的役割について、その一部を解明することができた。特に、血漿中と脳海馬中の濃度測定は、多数の生体内因性物質による影響や妨害も懸念されたが、カラムや移動相等の分離条件の改善により克服することができた。また、記憶学習能を評価するNORTやSRTも確立できたため、脳機能改善効果をin vivoで測定することが容易になった。さらに、来年度に向けてトリ核酸の神経幹細胞増殖および分化促進能に関する評価系も確立できた。現在、64種類のトリ核酸を入手しており、これらの生理活性について検討中である。したがって、来年度に向けた準備も着々と進みつつあり、今後研究計画に沿った実施とその成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)記憶学習能の向上作用を示すトリ核酸の選別と評価を行う。64種類のトリ核酸をマウス脳海馬由来神経幹細胞に添加し、増殖促進と神経新生作用を指標に、最も効果の強いものを選別する。選別されたトリ核酸(対照として溶媒)をマウスに経口投与し、血漿と海馬組織中のトリ核酸濃度をLC-MS/MSで測定するとともに、NORTやSRTを実施し記憶学習能を調べる。濃度と効果の関係から、記憶学習能向上に必要なトリ核酸濃度を推定する。海馬対血漿中濃度比の絶対値から、脳への移行性を評価する。(2)トリ核酸の消化管吸収と脳移行機構を調べる。(1)で評価したトリ核酸をマウスに経口投与後、経時的に血漿を、最終点で海馬組織を採取し、トリ核酸濃度を測定する。投与量は(1)で効果の得られた近辺に設定する。対照として静脈内投与を行い、両投与経路での血漿中濃下面積(AUC)を比較することで生物学的利用率を評価する。静注データから全身クリアランスと分布容積を算出し、体内動態の特徴付けを行う。生体内因性の核酸の影響を除外するため、重水素標識体や蛍光標識体を用い同様の解析を行う。記憶学習能に及ぼす核酸の効果が混餌投与で見られる点に着目し、トリ核酸の混餌投与後でも同様な検討を行う。体内に投与された核酸は一般に不安定であると考えられているが、混餌投与では比較的安定な可能性が考えられるため、経口投与と混餌投与後のAUCを比較することでこの点を解明する。消化管吸収機構を特徴づけるため、小腸上皮モデル細胞Caco-2を単層培養し、刷子縁膜側から基底膜側への経細胞輸送を評価する。濃度依存性、Na依存性、pH依存性、各種膜輸送体阻害剤の影響等を検討することにより、輸送機構の特徴付けを行う。血液脳関門透過機構を解明するため、脳血管内皮細胞モデルhCMEC/D3を用いCaco-2と同様の解析を行う。
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