2017 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイト変性に起因する認知症モデル創製と創薬標的TRPチャネル
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17K19486
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白川 久志 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50402798)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / TRPV4 / TRPM2 / 白質傷害 / 慢性脳低灌流 / 認知症 / Ca2+シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
髄鞘を形成することで神経伝導速度を高めるオリゴデンドロサイトは脳の白質における主要な構成細胞であり、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)から分化・成熟する。従って、OPCの増殖・遊走・分化の適切な制御は、認知症などの白質傷害を伴う疾患の治療において重要な基礎的知見であると考えられる。そこで本年は創薬標的TRPチャネルとして、熱やアラキドン酸代謝物、機械刺激により開口するCa2+透過性カチオンチャネルであるTRPV4に着目し、TRPV4開口刺激による、ラット初代培養OPCのCa2+応答および増殖・遊走・分化に対する影響を検討した。その結果、OPCにはTRPV4が機能的に発現しており、その開口刺激は、遊走・分化に影響を与えずに増殖を促進すること、そのメカニズムとしてCa2+シグナリングとPKC経路の活性化が関与することが明らかとなった。 慢性的な脳低灌流条件下では認知症の発症リスクが高まる。そこで、微小金属コイル装着による両側総頚動脈狭窄 (BCAS) を施すことによりマウス慢性脳低灌流モデルを作成して、創薬標的TRPチャネルの役割を検討した。本年は、脳や免疫担当細胞に豊富に発現するTRPM2に着目し検討を行った。BCAS処置により、血液脳関門の軽微な破綻および活性酸素種の発生が観察されたが、それらは両遺伝子型マウス群の間に差はなかった。一方、BCAS処置28日後において野生型マウスでは白質傷害および認知機能障害が惹起されたが、TRPM2-KOマウスでは顕著に抑制されていた。さらに、白質脳梁部におけるミクログリア数も減少していた。そこでミクログリア阻害薬のミノサイクリンを投与したところ、対照群と比較して認知機能障害は顕著に抑制された。以上の結果から、ミクログリアに発現するTRPM2の活性化が慢性脳低灌流に伴う白質傷害および認知機能障害に深く関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表に引き続き、原著論文発表も行うことが出来、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はオリゴデンドロサイト前駆細胞における他のTRPチャネル、具体的にはTRPM3チャネルに着目して、同研究を推進していく予定である。また、認知症モデル実験のほうでは、マウス慢性脳低灌流モデルを用いて、白質傷害に至る詳細なメカニズムを解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
予想以上に研究が進展したため、物品および実験動物の消費量が予想を下回った。本年は、作成が遅れていた複数の動物モデルの作出に成功したため、それらを詳細に解析する予定である。従って、物品費は前年度以上に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)