2017 Fiscal Year Research-status Report
脳疾患治療薬開発を劇的に加速させる新規血液脳関門制御技術の開発
Project/Area Number |
17K19487
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 欣晃 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (50444500)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋野 展正 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (90469916)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 血液脳関門 / Claudin-5 / 抗体 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化、ストレスにより中枢神経系疾患患者が増加しているが、治療薬の開発は難航している。その理由の一つに、脳内への薬物移行を阻む血液脳関門の存在がある。血液脳関門は、血管中から脳内への低分子の移行を阻害し、脳を異物侵入から守る重要な防御機構である。一方で、血液脳関門は脳への薬物の移行も阻害してしまうため、優れた中枢神経系疾患治療効果を示す候補分子の開発が、脳へのデリバリーの問題で中断している。そこで本研究では、「血液脳関門を一過的に緩め、薬物の脳送達を促進する活性を持つ抗体」の作製を目指した。 マウスに血液脳関門の機能を担うClaudin-5を免疫し脾臓から抗体産生細胞を取得、ハイブリドーマ作製を介し、ヒトClaudin-5の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体を取得した。得られた抗体の種間交差性、他のClaudinファミリー分子との交差性をFACSにより解析した。また抗体のin vitro血液脳関門制御活性の評価を、血液脳関門in vitro再構成系(脳血管内皮細胞、アストロサイト、周皮細胞の共培養系)を用いて評価した。これらの解析から、取得した複数の抗体が、血液脳関門のバリア機能を弱め、物質透過を促進する活性を有することを明らかにした。 また、取得したヒトClaudin-5結合抗体のin vivoにおける血液脳関門制御活性を評価するために、マウスのClaudin-5をヒト型に置換した「ヒトClaudin-5マウス」の作製に着手した。マウスES細胞の内在性Claudin-5のコード配列を相同組換えによりヒトClaudin-5に正確に置換した。得られたES細胞が正常な核型を持つことを確認した後、キメラマウスの作製を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗体の作製と機能評価、マウスの作製もほぼ当初予定通り進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒトClaudin-5マウスの作製を継続、完了する。得られたマウスを用いて抗体のin vivo血液脳関門制御活性を評価する。具体的には、取得した抗体が、マウス血管内の低分子色素を、脳側に移行させる活性を持つかを解析する。次に、各抗体がどの脳部位の血管透過性を亢進させるかを、全脳イメージングシステムを用いて解析し、抗体が色素を移行させる脳部位を特定する。また、抗体作用部位に関連する中枢神経系疾患を選定し、既存薬による病態モデルマウスの治療効果が、Claudin-5抗体により増強されるかを検証する。得られた結果から、Claudin-5抗体を用いた血液脳関門制御技術を確立できたかを結論づける。
|
Causes of Carryover |
2017年に完成予定であった遺伝子改変マウスの作製が数週間遅れ、作製費と解析用の費用が2018年度の支払いとなってしまったため。
|