2017 Fiscal Year Research-status Report
Novel regulatory mechanism of Abeta degradation via ER stress
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17K19490
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上原 孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00261321)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 小胞体 / 小胞体ストレス / ユビキチン / 細胞内局在 / アルツハイマー病 / Aβ |
Outline of Annual Research Achievements |
未だ解決されていない問題の一つとして,長時間に渡る小胞体ストレス環境が及ぼす細胞の質的な変化がある.例えば,ヒト神経変性疾患において,病態発症までの時間軸を考慮すると,ごく短時間での影響よりは,むしろ長時間/長期間によって起こり得る現象を解析する必要がある.そこで,本研究ではこれまで着目されてこなかったUPR活性化後に起こる神経細胞の機能的/質的変化を追求し,病態との関連性を明らかにすることに挑戦した. まずはじめに,私たちは,ユビキチンE3リガーゼの基質として新たにAβ分解酵素の一つを同定することに成功した.本酵素によって,当該酵素はポリユビキチン化されるものの,プロテアソームによる分解を受けないことが明らかとなった.そこで,ユビキチン鎖の特徴を解析するために,遺伝子改変型ユビキチンを発現させて,細胞内での動向を検討した.その結果,プロテアソーム感受性のK48ではない,ある種のユビキチン修飾が起こっていることが明らかとなった.当該酵素の活性を人工的Aβペプチドの水解活性から求めたところ,E3リガーゼの有無,ユビキチン修飾の有無によって,有意に抑制されることがわかった. さらに,興味深いことに,当該酵素は通常では細胞質全体に存在しているが,E3リガーゼ共存下では核周囲にドット状に集積していた.この局在は抗ユビキチン抗体陽性でもあった.また,この酵素はエクソソームを介して細胞外に分泌される報告があったため,ユビキチン修飾との関係を調べた.まず,ユビキチン化部位を変異体を構築・発現させることで同定した.この変異体を発現した細胞においては,細胞外に分泌される酵素量が有意に低下することがわかった. したがって, 小胞体ストレス環境下では,ある種のE3リガーゼが高発現し,基質をユビキチン化することで細胞内局在を変化させて,酵素活性を調節している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的酵素を同定し,ユビキチン修飾部位の同定にも成功した.さらには,この修飾による酵素活性ならびに細胞内局在変化への影響を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ユビキチン化によるエクソソームを介した細胞外輸送への影響を検討する.Aβ水解酵素のUb化がエクソソームを介した細胞外分泌にどのように関与しているのかを明らかにする目的で,まず初めに,Aβ水解酵素のUb化部位欠失変異体を使用して,蛍光免疫染色法から細胞内局在変化を検討する.さらに,細胞外に分泌された培地中のエクソソームを遠心分離によって回収し,含有Aβ水解酵素のUb化を検出する.また,種々のE3リガーゼ及びAβ水解酵素変異体を発現した際に,エクソソームを介したAβ水解酵素の分泌量に差が現れるか否かをELISAで調べる.加えて,Aβ水解酵素のC末に存在するモチーフ配列を含むタンパク質をヒトゲノムから探索し,Aβ水解酵素と同様に,Ub化を受けてエクソソームに内包されているか否かを明らかにする.順調に進捗した際には,種々のADモデル動物の脳組織におけるAβ水解酵素のUb化を調べる. さらに,Aβ蓄積への影響,特に野生型およびUb化酵素のAβ分解活性をin vitroにおいて調べる.次に,初代培養神経細胞やモデル神経細胞において野生型あるいは抑制変異型E3リガーゼを発現させ,細胞内,細胞外(培地中),および精製エクソソーム中の酵素活性を測定する.さらに,小胞体ストレスを負荷させてE3リガーゼを誘導した際のAβ分解活性ならびにAβ量についても同様に検討する. 可能であれば,E3リガーゼノックアウト細胞のAβ分解への影響を調べる.CRISPR/Cas9システムを駆使してE3ノックアウト細胞を樹立する.この細胞において,小胞体ストレスを負荷した際に,Aβ水解酵素のUb化,局在,エクソソームへの内包,Aβ分解活性,Aβ量(蓄積)への影響について検討する.
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