2017 Fiscal Year Research-status Report
トランスフェクション効率化のための外来DNAの核移行メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K19505
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
原口 徳子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (20359079)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 外来DNA / トランスフェクション / ドラッグデリバリー / 細胞核 / 遺伝子発現 / 核膜 / 蛍光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
主に、以下の3項目の研究を実施した。 (1)導入直後の間期細胞での挙動の解析:トランスフェクション試薬を使って導入された外来DNAが細胞質内に入った後、何が起こるかを可視化した。エンドソームに入った瞬間を可視化する方法としてpHrodo(酸性で蛍光、中性で無蛍光)を利用した。また、外来DNA自身を可視化するためにGFP-LacI/lacOシステムを利用した。まず、GFP-LacIを恒常的に発現する細胞株を作製し、その細胞にlacO配列(256リピート)を持つ外来DNA(lacO-RFP)を導入した。lacO配列に結合したGFP-LacIの蛍光を、蛍光顕微鏡を用いて観察することで、目的の外来DNAの位置を生きた細胞で可視化することに成功した。 (2)細胞分裂期での挙動の解析:上述したGFP-LacI/ lacO-RFPのシステムを用いて、細胞分裂期での外来DNAの挙動を生きた細胞で可視化した。このDNA(lacO-RFP)は、核内に移行すると、赤色蛍光タンパク質(RFP)が発現するように設計してあるので、RFPの蛍光を観察することで、DNAの核移行の時期を推定することができる。GFP-LacIの輝点の挙動を解析し、その後のRFPの蛍光を観察することで、分裂期で特徴的な挙動をするDNAが、後に発現することが分かった。 (3)核移行メカニズムの解明:外来DNAを核内に入れる効率を上げるために、どのような条件で核移行が起こるかを検討するために、GFP-LacIに様々な機能ペプチドを結合させた融合タンパク質(GFP-LacI-目的ペプチド)を発現させるためのDNA constructを作製した。今後、細胞へ導入し、核内への移行能が高いものを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したように、次の3項目について検討を行った。 (1)導入直後の間期細胞での挙動の解析: GFP-LacI/ lacO-RFPのシステムとpH蛍光指示薬であるpHrodoを利用することで、細胞質内に入った直後のDNAプラスミドの挙動を可視化することに成功した。従って、この計画は、当初の予定通りに進んでいる。 (2)細胞分裂期での挙動の解析:GFP-LacI/ lacO-RFPのシステムを用いて、細胞分裂期での外来DNAの挙動を生きた細胞で可視化することにも成功した。このDNA(lacO-RFP)は、核内に移行すると、赤色蛍光タンパク質(RFP)が発現するように設計してあるので、RFPの蛍光を観察することで、DNAの核移行の有無を知ることができる。面白いことに、分裂期で特徴的な挙動をするDNAが、間期になって遺伝子発現が起こることが分かった。この計画は、当初の予定通りに進んでいる。 (3)核移行メカニズムの解明:外来DNAを核内に入れる効率を上げるために、どのような条件で核移行が起こるかを検討するために、様々なDNAコンストラクトを作製した。 GFP-LacI/lacO-RFPシステムを利用することで、1分子の外来DNAプラスミドを生きた細胞で観察できていると考えている。また、遺伝子発現をRFPの蛍光として観察することができるために、予定していた解析が可能であると考える。全ての項目で計画通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、以下の3項目を実施する。 (1)導入直後の間期細胞での挙動の解析:作製したGFP-LacI恒常発現株に対して、lacO配列を持つ外来DNA(lacO-RFP)を導入し、GFP-LacIの蛍光を指標に、外来DNAの挙動を生きた細胞で解析する。導入した外来DNA(DNA plasmid)周辺にできる膜構造を詳細に調べるため、独自に開発したライブクレム(Live CLEM)法を用いてナノメートルオーダーの解像度で解析する。 (2)細胞分裂期での挙動の解析:引き続き、上述したGFP-LacI/ lacO-RFPのシステムを用いて、外来DNAの分裂期での挙動の解析を行う。赤色蛍光タンパク質(RFP)が発現した細胞については、外来DNAが核内に存在することを、超解像顕微鏡法、lacO配列に対するin situ hybridization法、GFPに対する免疫電験法を用いて明らかにする。 (3)核移行メカニズムの解明:外来DNAを核内に入れる効率を上げるために、どのような条件で核移行が起こるかを調べる。作製した様々なGFP-LacI融合ペプチドの評価を行う。核移行能の評価は、lacO-RFPから発現されるRFPの蛍光シグナルの量を指標に、蛍光顕微鏡法とWestern blottingの両者で検討を行う。RFPの発現が最も多かった方法について、外来DNA(lacO-RFP)が、細胞分裂後、いつ・どのように核内に入るのか、超解像顕微鏡法とLive CLEM法を用いて解析する。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行は順調だったため、試薬などの使用をかなり抑えることができた。次年度は、目的タンパク質を発現させるためのDNA constructの作製やそれらのタンパク質を恒常的に発現する細胞株を多数作製するために、血清などの高額試薬がたくさん必要となる。従って、試薬や培養容器などの消耗品を多く使うことになるため、物品費などに約350万円を使う予定である。また、成果を発表するための学会・研究会などへの参加の旅費として約20万円、主に論文の英文校閲に使う目的で人件費・謝金に約40万円、論文掲載費などのその他経費として約60万円が必要であると想定している。
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Research Products
(13 results)