2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19516
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
箕田 弘喜 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20240757)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | カソードルミネッセンス / 電子線照射ダメージ / 緑色蛍光タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の電子顕微鏡のシステムを利用してより低加速での電子照射実験を行った。具体的には従来確認できていた80kVまでの電子照射条件に加え、20kVの電子線照射条件で電子線照射損傷について検討した結果、低加速では電子線損傷がより大きいことが分かった。緑色蛍光タンパク質(GFP)を試料としており、カソードルミネッセンス発光について電子の照射量増加による強度の減衰速度を電子線照射損傷の程度を表す指標として定量的な評価を進めた。 電子照射による発光強度の低下の臨界ドーズ量を加速電圧200kVの場合と比較すると、20kVの場合には、5分の1程度以下に低下していた。このように低エネルギー電子照射の条件で、損傷が速いのは、電子の速度が小さいために試料と電子の相互作用時間が高速電子の場合より長いことが原因として挙げられ、このエネルギー範囲でのこの結果は、想定内の結果である。 さらに低加速の条件での電子線照射実験は電子顕微鏡を利用しはできないので、RHEEDを利用して低加速条件での実験を可能にする必要がある。そのために既存のRHEED装置改造の準備を進めた。まずは、光検出のためにミラーの構造について検討した。一般にカソードルミネッセンスは、照射電子の加速電圧が低いほど試料から照射される光の強度が弱いと言われている。このためより効率的に光を取りこむ必要がある。楕円ミラーと放物線ミラーを検討したが、光の取り込み方法について、RHEED装置の真空チャンバーの構造上の制約を考慮して、放物面ミラーを採用することとした。当初、楕円ミラーを想定していたため、放物面ミラーを採用することになったため、ミラーを取りつけるためのステージ周りのデザインを修正する必要が生じたため、設計が予定より時間がかかった。次年度に作成を始めて研究を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子顕微鏡での低加速条件での実験は順調に推進できた。従来の80kVでの低加速条件での実験に加えて、20kVでの条件を実現するためにこれに対応するレンズ条件をマニュアル的に設定してこれを実現し、電子線照射発光の実験を行い、照射ダメージの加速電圧依存性については調べることができた。像回転してしまうという問題点はあるものの、同一視野の観察、電子照射には問題ないことが確認できた。 一方、研究概要の欄でも記述したが、カソードルミネッセンスの検出のためのミラーとして楕円ミラーではなく放物面ミラーを採用することにしたため、ステージ周りのデザインの制約が少し変わることになった。元々のスペースが大きくはなかったため、ステージへの取り付け方法、および位置の調整方法に再検討をする必要が生じたものである。設計検討に想定より時間がかかったことと、その後、RHEED装置の放電トラブルが生じ、RHEED装置としては高加速条件である20~30kVの加速電圧条件での実験に問題が生じる可能性が出てきたが、数kVあるいは1kV以下の加速度での実験を遂行するのには問題ないことが確認できた。このような予期しないトラブルにより研究遂行に遅れが生じたが、年度末までにステージの設計上の問題は概ね解消できたので、生成30年度にステージを改造して低加速での実験を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
RHEED装置を用いての低加速実験の進捗が遅れているが、ステージの設計は概ね終了したので、平成30年度は、実際にステージを改造して低加速での光照射実験を進めていく予定である。20kV以下の条件では、低エネルギー電子照射の条件で系統的に光検出、あるいは検出したCL光の照射時間依存性を調べ、ダメージの程度を評価することが目標である。 平成29年度の研究によって、20kV以上の加速電圧の条件では電子のエネルギーが低下すると、照射ダメージが大きく、カソードルミネッセンスの発光スペクトルの変化が速いことから低エネルギー電子を照射するほど構造変化が速いことが明らかになった。照射電子と資料の相互作用時間を考えれば、低加速にした方が損傷が大きくなることは予想されることから、これは想定内の実験結果である。 しかしながら、更に照射電子のエネルギーを下げて、実質的に1kV以下の照射電子についての試料の損傷をCLスペクトルの照射量変化から検討するのが重要な課題である。1kV程度以下、とりわけ100V以下の条件になれば、電子は高速電子の照射によって生成する2次電子と同程度のエネルギー領域になることから、カソードルミネッセンスの照射確率が向上する可能性もあり、この場合は、実験の遂行にとってプラスの要素となる。さらに、10V領域になれば、光照射の条件とエネルギー的には同等の領域になるので、電子線照射による損傷低下が期待される。
|
Research Products
(2 results)