2018 Fiscal Year Research-status Report
中枢免疫寛容を維持する自己抗原の発現制御機構の解明
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17K19545
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高場 啓之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50637444)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 転写制御因子 / エピジェネティックス / クロマチンリモデリング / 次世代シーケンス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体が生命活動を獲得し挙動を示すのには、細胞から産生されるタンパク質が中心的な役割を担っている。タンパク質の発現は、転写制御因子や転写因子によってさまざまな遺伝子がダイナミックに制御されている。これらの一連の制御機構を理解することは、われわれがどのように生命体として出来上がり、生命活動を行っているかの理解に繋がる。今回我々は、胸腺の髄質上皮細胞に選択的に発現している転写因子Fezf2に着目し、質量分析解析を活用することで、Fezf2の共役因子を網羅的に同定した。それらの分子に着目することで、Fezf2を中心としてどのような遺伝子が下流で発現制御されているかを明らかにすることを試みた。一方で、最新のシーケンス技術を取り入れ、RNAシーケンス解析やクロマチン免疫沈降ーシーケンス解析を用いていることで、胸腺髄質上皮細胞におけるFezf2の分子挙動を明らかとした。また、質量分析解析の結果から、新規Fezf2相互作用因子FIPを同定し、FIPを胸腺上皮細胞で選択的に除去するコンディショナルノックアウトマウスを用意し、免疫学的な解析を行った。このマウスは胸腺細胞の分化(特に正の選択)は正常であったが、CD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞のT細胞抗原受容体のレパトアが大きく変化しており、負の選択に異常がある可能性が見いだされた。一方で、制御性T細胞などアゴニスト選択によって出来上がるT細胞の集団の割合は、野生型マウスと比べて大きな変化はなかった。そして、コンディショナルノックアウトは加齢に伴い、全身の臓器にT細胞の組織浸潤が見られるといった自己免疫疾患様の症状を示すことが明らかとなった。以上の結果から、胸腺上皮細胞で選択的に発現するFIPは、Fezf2と協調して自己抗原の発現を制御することで、T細胞の負の選択に関わる遺伝子であるとともに、中枢性免疫寛容に関わる重要な分子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に想定していたFIPの分子メカニズムより相当複雑な機構により、FIPが遺伝子発現を制御していることが明らかとなり、新たな視点と解析手法の確立に迫られた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、FIPが分子レベルでどのようにFezf2と相互作用するかや、クロマチン制御領域をより明らかとし、詳細な分子基盤の解明に挑戦している。また、FIPに反応する自己応答性T細胞が胸腺内でどのように選別されているかを可視化し、選択的に分取する実験系を確立している。
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Causes of Carryover |
当初の予定より論文の作成など遅延し目的の経費を使用する機会が無かった。
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Research Products
(2 results)